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週刊 PC&周辺機器レビュー 第96回

テレパソとしてさらに充実した新dynabook Qosmio D711

2011年04月01日 12時00分更新

文● 小西利明/ASCII.jp編集部

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ダブル録画時にSpursEngineを使えるのは
1番組のみ

東芝のテレパソでは共通のテレビ視聴・録画ソフト「Qosmio AV Center」。機能面での変更は特にない

 D711/T9Bが搭載するテレビ視聴・録画ソフトは、東芝PCでは定番の「Qosmio AV Center」である。テレビの視聴・録画、録画番組の圧縮(AVCHD形式)や光ディスクへの書き出しなど、テレビパソコンに求められるほとんどの機能が用意されている。

 録画中、または録画済みの番組をSpursEngineで解析し、番組中に出てくる人物の顔をピックアップする「顔deナビ」機能も、従来機種から引き続き搭載している。これらQosmio AV Centerの機能は、基本的に変更はない(関連記事)。

「顔deナビ」機能は番組を解析し、人の顔にフォーカスを当てて見どころを探しやすくする機能。スポーツ中継の早見に効果的

番組の予約録画機能。録画中にリアルタイムで圧縮したり、顔deナビのデータ解析も行なえる。圧縮モードは4段階で、HD解像度では最も高圧縮の「LP」でも、動きの少ない番組なら十分実用に足る

 テレビ機能の大きな改良点は、先述のとおり2番組同時録画に対応している点にある。ただし、SpursEngineを使う圧縮録画や顔deナビのデータ作成ができるのは、同時に1番組のみという制約がある。放送時間の重なる2番組を予約録画する際には、2番組とも何の警告もなく圧縮録画や顔deナビデータ作成を設定できる。しかし、実際にはどちらか1番組しか圧縮や顔deナビデータ作成は行なわれないのだ。その場合、圧縮されなかった番組はMPEG-2 TSのまま録画される。

圧縮と顔deナビデータ作成を設定した番組を2番組同時録画してみたが、1番組はSpursEngineを使えず、圧縮されない

 この場合でも、圧縮や顔deナビデータ作成が行なわれなかった番組を、録画後に圧縮したりデータ作成したりはできる。が、二度手間になるのは否めない。顔deナビデータの作成は、4つのコアを持つSpursEngineの全コアを使うほど負荷が高い処理なので、これが2番組同時にはできないというのは理解できる。しかし、圧縮録画は1コアしか使用しない(しかも顔deナビとの同時作業も可能)程度の負荷なので、なんとか2番組同時に圧縮録画できないものか、という思いは残る。

2番組同時録画中のSpursEngineの使用状況(右のアプレット)。圧縮と顔解析で4コアともほぼフル稼働状態

テレパソは機能強化の方向性を
転換すべきではないか

Qosmio AV Centerでは、推奨する番組をリストアップする「番組ナビ」を搭載。画面はユーザー間での予約録画ランキングを表示する「総合ランキング」

 Qosmio AV Centerはテレビ視聴・録画ソフトを過不足なく備えている。懸案だった2番組同時録画にも対応した。また、D711/T9Bは光回線ユーザー向けのHD動画配信サービス「ひかりTV」の視聴ソフトをプレインストールするほか、テレビ番組やネット動画をホームネットワークに配信する機能など、今のテレビパソコンに求められている機能は、ほぼ網羅していると言える。

 しかし、これはD711/T9Bに限らずテレビパソコン全般に言えることだが、「パソコンならではのテレビ活用」という点では、今や物足りなさを感じる。以前にとある国内大手パソコンメーカーの担当者と会話していた際に、「テレビパソコンにこのうえ付け加える機能は、どんなものがあるでしょう?」という話になった。このメーカーの製品も、D711/T9B同様に求められる機能はあらかた備えていたから、記者も答えに窮してしまったのだが、プレイステーション3用チューナーユニット「torne」を見ると、いかに自分が「HDDレコーダー的機能の実装」にしか目が向いていなかったかと思わされる。

 ユーザーインターフェースの快適さは、テレビパソコンでもさまざまな工夫が凝らされつつある(まだ十分とは言えないが)。だが本来パソコンが一番得意なはずのソーシャルメディア活用、有り体に言えばtorneのTwitter表示機能のようなものを、テレビパソコンで導入したものはない。「見る・録る」に関してはテレビパソコンも充実しているのだが、テレビを「より楽しんで見る」ためのアイデアについては、まだまだできることがあることをtorneは示している。

 幸い東芝は液晶テレビ「レグザ」で、「レグザAppsコネクト」というスマートフォンを使ったソーシャル連携機能に取り組んでいるという実績がある。このノウハウをQosmioシリーズの上にも導入していけば、パソコンならではのテレビの楽しみ方の幅も広がりそうだ。東芝は4月から、パソコン事業部門とテレビ・レコーダー事業部門がひとつの事業部門に統合したという。統合のシナジーがテレビパソコンにも波及することを期待したいところだ。


 話がそれたがまとめに入ろう。D711/T9Bは従来機種ゆずりの特徴、スタイリッシュなデザインとSpursEngineという魅力をそのままに、ダブルチューナーによるテレビ機能の強化と、基本性能の強化やBDXL、USB 3.0対応などにより、非常に充実した性能を持つテレビパソコンとなっている。

 競合する他社製品と比べても、見劣りする点はあまりない。せいぜい2番組同時の圧縮録画程度だが、選択肢から外すほどの欠点とは言えないだろう。パソコン兼パーソナルテレビ兼HDDレコーダーの1台3役マシンとして、お薦めできるパソコンである。

dynabook Qosmio D711/T9B の主な仕様
CPU Core i5-2410M(2.30GHz)
メモリー 4GB
グラフィックス CPU内蔵
ディスプレー 21.5型ワイド 1920×1080ドット
ストレージ HDD 1TB
テレビ機能 地上/BS/110度CSデジタル放送×2
無線通信機能 IEEE 802.11b/g/n
インターフェース USB 3.0×2、USB 2.0×4、HDMI入力、D4映像入力、コンポジットオーディオ入力、10/100/1000BASE-T LANなど
サイズ 幅531×奥行き190×高さ405mm
質量 約8.5kg
OS Windows 7 Home Premium 64/32bit(セレクタブル)
価格 オープンプライス(実売価格 21万円前後)

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