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山谷剛史の「中国IT小話」 第57回

HDMIの後を追う中国製規格「DiiVA」に明るい未来はあるか?

2009年10月27日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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中国発の新規格はいつも失速ぎみ

 普及すればケーブル代も安そうだし、面白そうな規格になりそうだが、果たしてうまくいくのだろうか。

 今までの中国における新規格・新コンセプトの製品は、発表時こそ華々しいが、発表後は発表時の自信・勢いが嘘のように失速するパターンがほとんどだ。たとえば「北京宣言」と呼ばれる「EVD陣営の企業は2008年内にDVDを停産」というEVDのテコ入れ発表では、中国国内はおろか日本などの海外メディアも注目し報道したが、実際に家電量販店店内では1台展示機があればよく、新タイトルの販売もないといった状況で、まったく消費者の目を向けさせることはできなかった。

3G製品はバス停などへの広告の掲載で認知された。DiiVAは……?

3G製品はバス停などへの広告の掲載で認知された。DiiVAは……?

 一番成功した新規格は、北京五輪前にスタートしたTD-SCDMAで、こちらは唯一のTD-SCDMAのキャリアである中国移動(チャイナモバイル)の数字によれば、8月末の時点で132万7000人が利用しているという。これは実質無料のデータカードのバラマキと、市内のあらゆる場所でお目にかかるそのプロモーションが原因だろう。すなわち、最も成功したパターンも初年度で100万人が関の山だ。

 もちろん腰を据えてこそ新規格は熟し、対応製品が多数登場するのだが、次々と新規格を出す傾向にある中国(企業)が、十年以上のスパンで腰を落ち着けてDiiVA普及を目指せるだろうか。

 すでにDiiVAのHDMI抜きというのだろうか、中国版DLNAの「IGRS(閃聯)(関連記事4)」が登場し、対応テレビ向けのウェブコンテンツを制作済みだ。このDiiVAはIGRSとも中国国内でバッティングするのだが、中国国内での新規格でバッティングが起きた場合、今のところすべていがみ合っている。DiiVAのメンバーは(中国では)豪華だが、IGRSにもレノボがいるので一筋縄ではいきそうにない。

EVD陣営のテレビメーカー長虹は今もEVDをリリースせず、DVDをリリースしている。DiiVA搭載機種を本当に出すのだろうか

EVD陣営のテレビメーカーで北京宣言に参加した長虹は今もEVDをリリースせず、DVDをリリースしている。DiiVA搭載機種を本当に出すのだろうか

 「創維」「長虹」「ハイアール」「TCL」などEVD陣営にいた中国電機メーカーの多くがDiiVAのメンバー企業となっているが、前述の「EVD陣営の企業は2008年内にDVDを停産」を守らず、未だにEVDプレーヤーを売らずDVDプレーヤーを販売するメーカーも、創維や長虹をはじめとして少なくない。ハイアールはEVDは販売せず、EVDのライバル(と自称する)ブルーレイプレーヤーを販売している。現状どのメーカーもHDMIをつけたテレビを販売しているが、どれだけのメーカーが様子見せずにDiiVAを搭載した製品を投入してくるか。


DiiVAで何をつなぐのか?

 HDMIはプレーヤー・レコーダー類やゲーム機とテレビを繋いでいるが、DVDが圧倒的に普及しDVDの後釜が育たない状況で、ゲーム機は海外からの非正規輸入が基本。中国国内でのゲーム機正式販売は、海賊版問題と中国国内の法律から見込みも立っていない。いったい、テレビと何を繋ぐのだろうか。PCとテレビを繋げるだけならそれこそIGRSで十分だ。NVIDIAやATIなどにDiiVA対応のカードを作らせる以上に、PCシェアナンバー1のレノボのPCにDiiVAコネクタを載せることは難しいだろう。

 コンテンツ面でいえば、オフィシャルサイトではテレビで「Facebook」が見られることを例に出しているが、中国からFacebookのページにはそもそもアクセスできない。テレビをネットに繋いで動画コンテンツといっても、最近になって政府がこれについての法律を制定したばかり(関連記事5))。

 すなわちDiiVAを繋ぎたくなる魅力が今後も十分とは言えない状況で、果たして中国の消費者はDiiVA端子搭載のテレビに食指が動くのだろうか。中国で売れなければ、中国といえど大きな市場ではないわけで、中国国外メーカーもDiiVAには消極的になろう。「売れない以前に、そもそもメーカーはそんなに売らないのでは」という予測を、いい意味で裏切る結果となるか。

■関連サイト


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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