中国では、最近薄型テレビ(Flat Panel TV:FPT)に注目が集まっており、それもプラズマテレビよりも液晶テレビが人気だ。当連載で紹介した家電店はもちろん(関連記事)、「カルフール」や「ウォルマート」などの大型スーパーでも家電売り場の中で液晶テレビの占める割合が以前よりもずっと大きくなっている。
今年3月末あたりから中国メーカー各社のハイエンドなFPTは、インターネットがお茶の間でできることをアピールポイントとしている。つまり薄型高画質というベクトルではなく、ネットもできる大画面テレビという多機能性のベクトルに中国の家電メーカーは舵をきっている。
薄型・高画質・高機能に日本のメーカーがこだわり、多機能性に中国のメーカーがこだわるのはテレビが初めてではない。振り返れば携帯電話やMP3プレーヤー、デジカメなど多数の製品ジャンルで同じ道をたどっている。
中国メーカー各社がネットもできるテレビに向かったとはいえ、どのメーカーもネット機能は横並びというわけではない。あるメーカーはユーザーが映画やドラマなど商用動画コンテンツが視聴できる、日本で言うところの「アクトビラ」のようなサイトを用意し、あるメーカーは動画共有サイトと提携したサイトを用意。あるメーカーは株価情報や天気情報などのメニューを用意し、またあるメーカーはテレビにフルブラウザーを搭載している。
さて、そうした状況下の8月18日、「Haier」に続くであろう総合電機メーカーの「TCL」が、コンテンツホルダーの「北京優朋普楽科技有限公司」から提訴され、話題となっている。TCLのネットができるテレビ「mitv」向けの特設サイトの動画が海賊版だというのだ。
「お茶の間でネットができて、動画が見られる!」と平均所得の2倍かそれ以上の大金を出して買い、特設サイトで対象の動画を見れば海賊版利用者に早変わりであり、購入者は不憫というよりほかない。
当記事執筆段階では判決は下っていないが、TCLのウェブページでは購入者に対して何のメッセージも表示されていない。問題が発生してもユーザーに目を向けないのは、TCLが特別ではない。ADSLが突然つながらなくなっても何の説明もないし、例えば「EVD」と「EVD2」のように(関連記事)、中国の独自規格はユーザー不在のまま矢継ぎ早にリリースされる。
最近の中国の動画コンテンツの海賊版の状況は、依然として住宅街から繁華街まで海賊版ビデオショップがどこにでもあるものの、中国国内のネット上のコンテンツについてだけは、版権所有者が動画サイトに損害賠償を訴えることで改善しつつある。
「叱られないようにする」ではなく、「叱られたらひっこめる」という国民性がためか、それでもなお毎月のように版権がらみの裁判のニュースを見る。そんなわけで日本のアニメなど中国国外のコンテンツに関しては、動画共有サイトだろうが、ポータルサイトだろうが、「CCTV」(中国中央電視台)のサイトだろうが、海賊版をアップしている。
中国のネットユーザーは、ネットコンテンツでも正規版を探すのは海賊版を探すより難しいことを知っている。だから今回の事件にしても、暗黙の了解を破った程度にしか感じていない。ポータルサイト「網易(NetEase)」のITチャンネルではこの問題をフォーカスしているが、このニュースに附設した「あなたは版権問題をどう思うか?」という質問には8割近くが「海賊版がはびこるままでいい」と回答し、「版権を重視すべき」という回答は2割程度にとどまった。
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