カメラの性能は戦場で決まる。過酷な環境で使えるか、という意味では極地や宇宙空間、ヒマラヤなどの高山、高温多湿なジャングル、砂塵が吹き付ける砂漠など、いくらでも思いつくが、危険と隣り合わせで、シャッターチャンスを狙う緊張感は戦場以外にないだろう。中東方面で戦場を取材したジャーナリストから、「過酷な戦場取材で使われるカメラは日本製が多く、高い信頼を得ている」と聞いたことがある。戦場で使えるカメラはよいカメラに違いないのだ!
身近な戦場といえば、自衛隊の「富士総合火力演習」。「日本製カメラ最新機種で戦場取材」という勝手な妄想、いや前提でニコンの新機種D300sを使ってみることにした。また、キヤノンAPS-C機シリーズのフラッグシップということで、ライバル機EOS 50Dとも比べてみた。
連写能力は戦車砲の射撃で測定せよ!
シャッターチャンスの女神は連射性能の高いカメラに微笑む。たとえば、戦車が発砲した瞬間に1/10秒程度出現する「発砲炎」は、カメラの連写速度が高くないと、写るか写らないかは腕と運任せ。カメラの連写性能が高ければ、腕や運に頼らず、発砲炎を撮影できるはずだ。そこで、D300sとEOS 50Dで74式戦車の射撃を撮影し、連射性能の違いを見ることにした。どちらも三脚で固定し、メモリーカードは信頼性が高くデータ書き込みが高速なサンディスクExtreme IVを使用。さらに、D300sはオプションのバッテリグリップを取り付け、通常連写秒間7コマを秒間8コマで撮影した。
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D300s連続撮影
EOS 50D連続撮影
D300sもEOS 50Dも、1回目の撮影で発砲炎を捉えた。しかし、同じ戦車の射撃をもう一度撮影すると、タイミングが合わず、発砲炎はどちらも撮れなかった。D300sは秒間7コマ(8コマ)、EOS 50D は秒間6.3コマなので、何度も撮影すればD300sの方がその瞬間を捉えるチャンスは多そうだが、2回撮って1回失敗であれば、「引き分け」というところだろうか。
D300s連続撮影
EOS 50D連続撮影
戦車砲の発射時の音と衝撃波は数10メートル離れていても相当強く感じる。特に90式戦車の射撃は、発射の瞬間に大きな音と衝撃波で姿勢が崩れ、戦車がファインダーからフレームアウトする。これだけは何回体験しても慣れない。音と衝撃で気分が悪くなることもある。身の危険の無い平和な演習でもこうなのだから、戦争映画で前線の兵士がスキットルで酒を呷りながら戦う心情も、わずかだけだがわかった気がする。
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射撃撮影は、カメラの性能に加え人間の判断やシャッターボタンを押す反射神経の要素の影響も大きい。取材中の飲酒などもってのほかである。
(「動画撮影機能のあるD300sを夜戦(夜間演習)に投入だ!」へ続く)