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図で解剖!スイッチ&ルータ 第2回

家庭向け製品との違いを知ろう

高価な企業向けスイッチはここがすごい!

2009年07月30日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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音声や動画の品質を保証するQoS

 近年、IP電話やTV会議システムなど、企業内ではLANを使ったリアルタイムコミュニケーションのシステムが次々と導入されている。これらのアプリケーションは送受信における時間的な制約が厳しく、フレームの伝送遅延時間の変動(ゆらぎ)が大きいと聞くに耐えない音声やコマ切れの画像になってしまう。さらに、LANの負荷が高い場合でも、一定の速度でデータが流れ続けることが必須とされる。

 このような要求に応えるため、QoSがスイッチに実装されるようになった。QoSはQuality of Serviceの略で「データの受信者が、データを必要なときに、必要なところで得られること」を意味する。

 QoS機能を持つスイッチは、トラフィックごとに転送の優先順位を変えたり、帯域幅の上限や下限を定めることができる(図8)。QoSを制御するため、Ethernetフレームに3ビットの優先順位フィールドが追加された。このフィールドを使って、ユーザーは8段階までの優先順位を設定できる。

*****[image]zu_08.png*****

図8 QoSにより、パケットを分類し、転送順位などに差を付ける

 たとえば、IP電話サーバから送出されるEthernetフレームには最優先の“7”を優先順位フィールドに埋め込むように設定し、ファイルサーバから送出されるフレームには最低の“0”を埋め込むように設定する。経路上にあるIEEE802.1pに対応したスイッチは、優先順位が“7”のフレームを“0”のフレームに優先させることで、IP電話の転送が行なわれていても通話が滞らないようにするのだ。

 また、IP電話対応という点では、UTPケーブルでIP電話機などに給電する「PoE(Power over Ethernet)」に対応する機器も増えている。PoEはIEEE802.3afという規格で決められているが、独自に高出力のPoEを実現するベンダーもある。

障害の予防や究明のための監視機能

 PCが数百台、スイッチも数十台という規模のLANは、大企業では特に珍しくない。この規模になると、LANの管理を手作業で行なうことはもはや不可能で、稼動情報の収集や障害の検知・対応を自動的・機械的に実現する仕組みが必要である。

 まず、ネットワーク上の個々の機器を遠隔管理するため、「SNMP(Simple Network Management Protocol)」がある。企業向けの「インテリジェントスイッチ」などのネットワーク機器は、SNMPにより遠隔地から状態を監視し、必要であれば設定を変更したり再起動を行なったりして障害への対応することが可能だ(画面1)。

*****[image]gamen_01.png*****

画面1 スイッチの状態をビジュアルで表わすSNMP対応の管理ツール

 しかし、ネットワークの異常原因を調査したり予防保全を行なうためには、個々の機器を監視・管理するだけでは不十分だ。IP電話の音声にエコーがかかったり、ビデオ配信が寸断されるといった問題を解決するには、ネットワークを流れるデータの種類や流量などを把握する必要がある。

 そこで、ネットワークを流れるトラフィックを収集・解析し、統計情報を通知する仕組みが考案された。最初に登場した「RMON(Remote network MONitoring)」は、スイッチを流れるすべてのトラフィックを収集・解析し、統計情報を通知する。

 しかし、Ethernetの速度が100Mbps、1Gbps、10Gbpsと向上していくにつれ、スイッチの負荷やメモリの使用量などの面から、すべてのトラフィックを収集することが不可能になってきた。そのため、「NetFlow」や「sFlow」などサンプリング※8に基づくトラフィック計測の仕組みが考案された。

※8:サンプリング NetFlowやsFlowでは、設定された割合(サンプリングレート)でトラフィックを抽出し、統計学的に分析することにより、トラフィック全体の情報を推測する。

 現在、NetFlowやsFlowは、比較的上位のクラスのスイッチに実装され、通信事業者やISPでの利用が大半だが、今後は一般の企業にも普及していくだろう。

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