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10Gbps実現のためのさまざまな技術
10GbpsのEthernet規格は大きく「WAN PHY(ワンファイ)」と「LAN PHY(ランファイ)」に分かれる。WANやLANという言葉を使っているので、WAN PHYはWAN専用、LAN PHYはLAN専用と誤解するかもしれない。しかし、WAN PHYもLANPHYも用途を規定した言葉ではなく、WAN用に使われる回線のインターフェイスに対応しているかどうかを表わしているにすぎない。そのため、LAN PHYの技術であっても、ダークファイバを使ってWANやMAN(Metropolitan Area Network)を構築できる。さらにLAN PHYは3つのファミリーに分けられる。そのため、当初の10Gbps Ethernetの規格は4つのファミリーで構成されている(図1)。なお、標準化は現在も進んでおり、最新の規格についてはこの記事を参照してもらいたい。
WAN PHYの規格である10GBASE-Wファミリーは、「SONET(Synchronous Optical NETwork)/SDH(Synchronous Digital Hierarchy)」と呼ばれる光伝送技術のインターフェイスを持つEthernet規格である。図1の(1)にある「WIS(WAN Interface Sublayer)」がSONET/SDHのフォーマットを扱う部分であり、ほかの10Gbps規格と大きく異なる点だ。SONET/SDHのOH(Over Head:制御情報のエリア)が別途必要になるため、実際には最大9.95Gbpsの伝送速度となる。
一方のLAN PHYには、64ビットのデータを66ビットに変換する「64B/66B符号化」を行なう10GBASE-Rファミリー、8ビットを10ビットにする「8B/10B符号化」を行なう10GBASE-Xファミリー、そして後述する「LDPC符号化」を用いてより対線で伝送する10GBASE-Tがある。これらの分類されたファミリーは物理構成だけ見るとその違いがわかりにくいが、ケーブルに信号を流す仕組みを見るとその構成の違いがよくわかる(図2、3)。
10Gbps規格の中で一番シンプルなのが10GBASE-Rファミリーである(図2の(1))。10GBASE-Wと同じ64B/66B符号化を行ない、1対の光ファイバによって相手のノードと接続する。直接接続となるので、10Gbpsの帯域をフルに利用できる。
10GBASE-Xファミリーは、8B/10Bで符号化し、それを4つのレーンに分配して10Gbpsの伝送を行なう規格だ(図2の(2))。特徴的なのは、1本の光ファイバに波長の異なる複数の光信号を流す「WDM(Wavelength Division Multiplex)」の技術を使う点にある。10GBASE-Xファミリーでは、WDMを使って4波長を1つの光ファイバに伝送する。そして、1つの波長で3.125Gbpsの伝送を行ない、4波長をすべて使って10Gbpsの伝送を実現している。1波長あたりの伝送レートを低く設定しているため、安価なマルチモード光ファイバを利用した場合でも300mの伝送が可能である。
そもそも10GBASEは、光ファイバを伝送媒体とする規格が早くから標準化されてきた。そこにあとから加わったのが、より対線を伝送媒体とする10GBASE-T(IEEE802.3an)だ。それでは、10GBASE-Tを実現する技術について見てみよう。
(次ページ、「より対線で10Gbpsを」に続く)

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