KVMスイッチを使えば、1セットのKVMコンソールで複数のコンピュータを操作することができ、モニタやキーボードなどのハードウェアを削減できる。さらに最近の「デジタルKVMスイッチ」を導入すれば遠隔操作も可能になり、保守コスト・移動コストの削減やサービスレベルの向上など多数のメリットが得られる。
KVMスイッチの今昔
KVMとは、「キーボード(Keyboard)、ビデオ(Video)、マウス(Mouse)」を指す略語で、この3つを総称して「KVMコンソール」と呼ぶ。KVMコンソールはコンピュータを操作するために必須のデバイスで、通常はコンピュータ1台につき1セット必要だ。しかし、KVMスイッチ(KVM切替機)を使えば、1セットのKVMコンソールで複数のコンピュータを操作することができる。
初期の「KVMスイッチ」のマーケットは、デスクトップPCを複数台所有するコンピュータのヘビーユーザーだった。PCの本体は机の下や横に並べておけるが、台数分だけキーボード・モニタ(ビデオ)・マウスを机の上に置くことは、日本の狭小なオフィス空間では非常に難しい。そこでKVMスイッチを導入すれば、キーボード・モニタ・マウスを個別に設置する必要がなくなる。スペースの有効活用とともに、キーボード・モニタ・マウスの削減というハードウェアのコストダウンが即座に実現するのである(図1)。
そのあと、ダウンサイジングやインターネット技術の進歩に伴い、企業に導入されるサーバの数が増加し、サーバ向けKVMスイッチの需要が急速に高まった。ひとくちにサーバといっても、その用途はファイル共有、電子メール、グループウェアなどと多種多様であり、KVMコンソールを操作する管理者も一人とは限らない場合が多い。また、KVMスイッチはサーバルーム内に設置されるが、KVMコンソールはサーバルーム外のオペレーションエリアに設置されるなど、コンソール管理に対する要件もよりセキュアになっている。このためサーバ用のKVMスイッチは、
- 1セットのKVMコンソールから操作可能なサーバ数の増加
- PC以外のサーバ(UNIXなど)への対応
- KVMスイッチからKVMコンソールまでの距離の延伸
- 複数のKVMコンソールへの対応
- KVMコンソールのアクセス制限(ユーザー・グループ登録)
などの面で、クライアントPC用のKVMスイッチとは違った進化を遂げている。
最近では、ネットワーク経由で操作可能な「デジタルKVMスイッチ(KVM over IPスイッチ)」が登場し、遠隔地からのサーバ操作が可能になった。これを受けて、コンピュータとKVMコンソールとの距離が最大でも数m~数百m程度にしかならない従来型のKVMスイッチは「アナログKVMスイッチ」と呼ばれるようになった。
(次ページ、「KVMスイッチによる直接的なコスト削減」)
この連載の記事
-
第45回
ビジネス
【45本目】パートナー参加でストックフォトが安くなる? -
第44回
データセンター
【44本目】無個性だけど低価格!アリスの裏メニューとは? -
第43回
ビジネス
【43本目】FAXのようにメールを送るNetSpartで通信費削減 -
第42回
ソフトウェア・仮想化
【42本目】あのDBからの乗り換えで半額に!IBM DB2という選択 -
第41回
データセンター
【41本目】モジュラー型データセンターのコスト勘定とは? -
第40回
ネットワーク
【40本目】機器のコストを下げる中古という選択肢 -
第39回
ソフトウェア・仮想化
【39本目】データ統合ツールで人海戦術を排除したら? -
第38回
ネットワーク
【38本目】1時間4.5万円で、あのテレプレゼンスが使える! -
第37回
TECH
【37本目】ウイルス対策ソフトを無料で強化する方法 -
第36回
TECH
【36本目】管理者泣かせのパッチ地獄から逃れる方策 -
第35回
サーバー・ストレージ
【35本目】アーカイブ活用でExchangeサーバーをなんと半分に - この連載の一覧へ