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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第48回

「酢鶏」作者が語る「一家に一台、人工無脳」の未来像

2009年05月18日 15時00分更新

文● 古田雄介

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「酢鶏」の名前は、テスト段階での連呼がきっかけ

―― 酢鶏を開発した経緯を教えてください。

shohoji氏。酢鶏を開発した際の喜びについて「普通のプログラミングなら『思い通りに動いた!』という喜びですが、酢鶏の場合はどんな反応が返ってくるのか私でも分からないのが面白かったです。作り終わったあとも自分で楽しめるんですよ」と語る

shohoji 2004年5月頃の某日なんですが、「ブログペット」という、ブログの片隅で動物を飼育できる人工無脳の一種を使ったサービスを知って、一目惚れしたんです。

 それで興味を持って仕組みを調べていくうちに自分でも作れるんじゃないかという気持ちが沸いてきて、一晩で徹夜して作ったんですよ。

 最初は、与えられた文章を基にブログの記事を自動生成する仕組みで、phaさんの「圧縮新聞」(インタビュー記事)に近いプログラムでしたね。

 公開前に自分が書いたブログを基にしてテストしたんですが、たくさんある記事の中からなぜか「酢豚で豚の代わりに鶏を使ってみたよ」という記事ばかりが拾われて、やたらと「酢鶏が~」「酢鶏が~」という文章が作られたんです。

 そこで「よし、お前の名前は酢鶏だ」となりました(笑)。


―― それは「酢鶏」にするしかないですね(笑)。それからコメントの自動生成機能などを追加していったわけですか?

shohoji はい。公開から数週間後に、ブログの記事を再構築して記事を投稿できるなら、ブログに書かれたコメントを基にして誰かのブログにコメントを作ることもできるのではと思いつきまして。当初は予想通りに動いたので面白かったですね。私が何もしなくても、勝手に酢鶏が色々な人のブログにコメントしていったんですよ。

 ただ、まもなくスパムコメントが流行るようになって、各社が自動投稿プログラムをはじく仕組みを導入したので、しばらくしてコメント投稿は止めました。

リアルなユーザーと絶妙な会話を繰り広げる酢鶏のTwitterページ


―― チャットやTwitterのようなリアルタイムの会話ができるプログラムはいつ頃追加したのでしょう。

shohoji その年の夏前ですね。一番最初はIRCのチャット用でした。リアルタイムというとすごく難易度が高そうですが、実は意外と簡単で、ベースのプログラム自体は数行で済む程度なんですよ。ただ、どういうルールで与えられたメッセージを返すのか決めるのが大変ではあります。

 過去の会話ログから似たような流れを抽出して言葉を選ぶのが基本のプログラムになるんですが、少し喧嘩腰の会話の流れがあったとして、酢鶏が「氏ね!」などの言葉を拾ってきたらマズいですよね。あと、誰かの個人情報が書き込まれているログを拾ってしまうのも問題です。その辺りの調整を続けて、そうしたワードをピックアップしないようにするフィルターを加えていく作業が必要になるわけです。


―― shohojiさんでも酢鶏の発言は予想しきれないから大変ですよね。印象に残っている酢鶏のコメントはありますか?

shohoji 3~4回のやりとりで面白いのはたくさんありますよ。でも、一番記憶に残っているのは、mixiの「酢鶏コミュ」での会話です。皆がオフ会をやろうという話で盛り上がっていたのですが、そこで突然酢鶏が「●●を囲む会をしようぜ!」と言い出して(笑)。それで皆ノリ気になって、10人近く集まって本当に●●くんを囲むオフ会をやったんですよ。

 そうやってリアルな現象を引き起こしたというのが印象的でしたね。その後も酢鶏のコメントをきっかけに、2~3回はオフ会が開かれています。

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