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エントリーサーバの攻防

2001年11月20日 14時48分更新

文● 渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp)

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V880の発表の席で、「小型サーバ分野においてPCサーバを凌駕するSunのエントリーレベル・サーバ」と表現された。しかも、「凌駕」という言葉は「駆逐」と言い換えてもよい、という説明付きである。

この発言の根拠として挙げられたうち、興味深かったのは“不況の影響”である。ちょっと前なら、小型サーバは各部門がそれぞれ独自に選定して運用していたが、現在の経済状況ではあまり野放図な予算執行もできないため、サーバの導入はIT部門が直接管理するようになってきているという。すると、専門家であるIT部門は信頼性や拡張性、管理コストなどを重視した選択を行なうため、Sunのサーバが選択されるというのだ。

もちろん、V880に関しては拡張性やコストパフォーマンスの面でのメリットもさまざま紹介されたのだが、ここではそうした点については省略し、発表会の席上で示された図の1つについて考えてみたい(図1)。

図1
図1

図では、小型サーバと中・大型サーバの比較ということになっているが、実際にはIAサーバとSPARCサーバの比較と見てよい。一般に利用されているIAサーバでは、最大4CPU程度までの拡張性を備えたものが一般的で、それ以上の規模の拡張をサポートする機種はごくわずかとなる。しかも、IAサーバで一般的に利用されているWindowsやLinuxでは、SMP構成でCPUを増やしていった場合、4CPU程度までならCPU数に比例する形で性能が向上するが、それ以上の数になると効率が低下し、CPU数ほどには性能が向上しない、という問題があると言われる。それが、図にもある「スケーラビリティ性能の低下」ということである。そこで、“小さく始めて大きく育てる”という方針でサーバを選択する場合、最初にIAサーバを選んでしまうと4CPUのところでいったん頭打ちになり、それ以上の拡張のためにはアーキテクチャを変更せざるを得なくなる、というのがSunの主張だ。たとえば、IAサーバ+Windowsという環境であれば、ハードウェアもソフトウェアもすべて変更になるため、システムを新たに作り直し、過去の資産を放棄する、という決断を迫られる。

Sunの主張としては、だからスケーラビリティに富むSunのサーバを最初から使いましょう、ということになるのだが、これは逆の見方もできる。IAサーバ+Windowsという環境で始めたユーザーにとっては、SPARCサーバへの移行には障害があり、簡単に移行はできない、ということでもある。ここで問題になるのは、特に図の左端に近いあたりで見られる「コスト」の差である。先に紹介したとおり、V880の価格は、IAサーバのトップエンド機に近い設定になっている。比較として紹介したCompaqの機種は最大8CPU構成が可能なモデルであり、「小さく始める」ユーザーが最初に選択する機種とは言いがたいので、実際に一般的に小型サーバとして利用されるのはもっと小規模でもっと低価格な機種である。そして、こうした機種で始めるユーザーにとっては、最初の投資額が小さいことは大きな魅力であり、将来の拡張性は無視しないにしても、最初からそう大きな投資を行なうわけではないだろう。そのため、Sunとしては、最初に「小さく始める」際に選択しやすいように、もっと小規模でもっと低価格のモデルを用意しなくてはならないはずだ。将来の拡張性だけではなく、スタート時点でもIAサーバと直接比較されるようにならないと、ユーザーに対するアピールとして弱いと言わざるを得ないだろう。

現在、最低ラインのIAサーバはシングルCPUで10万以下、というところまで価格低下が進んでいる。さすがにこのレベルは難しいにしても、ある程度の信頼性と拡張性を備えたIAサーバは100万以下という価格帯が主となっている。Vシリーズに今後どのようなモデルが追加されるかは今後明らかになっていくはずだが、V880が“ハイエンド”である以上、より小型でより低価格のモデルが追加されることは間違いない。今の関心は、その価格がどこまで低く設定されるか、である。IAサーバと正面から競合する「ローエンド」サーバの投入に期待したいところである。

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