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ブレードサーバの楽しみ方(その1)

2003年05月20日 01時46分更新

文● 渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp)

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 もういちいち言及するのが飽き飽きするほど、経済は停滞し続けている。しかし、インターネットのトラフィックは順調に成長を続けているようだ。国内事情としては、やはりブロードバンド接続の低価格化と急速な普及が効いているようで、「ブロードバンドで常時接続」というのは2年前なら先進ユーザー向けの特集企画として成立しただろうが、現在ではごく当たり前の環境になってしまった感がある。こうしてユーザーが増えれば、当然そこに向けての情報発信も盛んに行なわれるし、郵便でダイレクトメールを送るよりも低コストで済むだろう。というわけで、スパムと言うべきかどうかは微妙だが、筆者のところにも大量の広告メールが日々送られて来ている。となると、サーバの需要もちゃんとあるということだ。

ブレードサーバ前面

 ブレードサーバは、基本的には3階層モデルで言うところのプレゼンテーション層、一般的にはWebサーバ等に使われることを前提に設計された、用途に特化した設計のサーバだと言える。どのようなハードウェアを“ブレードサーバ”と呼ぶか、というのは必ずしも明確に定義されてはいないようだが、一般的な認識としては、CPU/メモリ/HDDだけを備える最小構成のサーバ機をカード状のモジュール(これをBlade:ブレードと呼ぶ)とし、これを土台となる“エンクロージャ”のスロットに差し込んで利用する。既存の製品で似た形状のものとしては、ホットスワップ対応のHDDスロットが思い浮かぶ。実際形状としてはよく似ており、HDDの代わりにサーバ丸ごとを差し込めるようにしたのがブレードサーバだと表現することもできるだろう。

 ブレードサーバの設計上の狙いは、“高密度実装”という点にある。ブレードサーバでは、エンクロージャのサイズが2~4Uというサイズになり、エンクロージャにはおおむね10数個のブレードが装着できる、というデザインが標準的だ。Sunが今回発表した「Sun Fireブレードプラットフォーム」も同様で、エンクロージャとなる「Sun Fire B1600インテリジェントシェルフ」(以下B1600と略記)は3Uサイズで最大16個のブレードが装着可能だ。

 ブレードサーバでは、1台のエンクロージャに複数のブレードが装着され、しかもそれぞれが独立したサーバとして動作するのが特徴だ。Sunは大規模なSMPマシンに強みを持っており、同社のラインナップでみれば“16CPUのサーバ”であればちょうどミッドレンジに位置づけられるだろう。しかし、SMP構成の16CPUのサーバが1台のコンピュータなのに対し、ブレードサーバでは、1台のエンクロージャに納められていても、実体としては最大16台の独立したサーバ群ということになる。CPU数の合計が同じでも、この両者はまったく異なる用途を想定していることは明らかだ。

 ブレードサーバが想定する用途として代表的なのは、なんと言ってもWebサーバの部分である。ブレードサーバには発熱の問題もあり、ハイエンドの最強クラスのCPUを使う例はあまり一般的とは言えない。実際には「そこそこの性能のサーバをとにかく狭いスペースにぎっしり押し込んで使いたい」という用途に向けた製品である。で、こうした使われ方をするサーバの用途としては、Webフロントと呼ばれる分野が代表例となるわけだ。

 ネットワークサーバの高密度実装に先鞭を付けたのもSunで、Netraシリーズの投入で始まった1Uサーバは今や一般的な存在となっている。ちなみに、1Uというのは一般的な19インチラックにおける厚みの最小単位で、おおよそ5cm弱である。これは十分小さいようだが、実はラックは幅が60cm、奥行きが80cm程あるので、一般的な1Uサーバというのは、その語感から想像するほど小さなものではない。ラックに収められた状態でフロントパネルから見ると「ぎっしり詰まってます」という風情で見えるが、ラックから外して床に置いて上から見れば、座布団より大きな平べったいシロモノである。1Uサーバを使って多数のサーバを設置する場合、たとえば3Uのスペースで3台のサーバが設置できる。これをブレードサーバに置き換えれば、3Uサイズで16台のサーバが設置できることになる。こうした高密度実装が実現した背景には、ラックの幅と奥行きが結構あることも効いている。さらに、ブレードサーバでは電源ユニットのような部品を全ブレードで共用するようになっている。独立したサーバとして動作するために独自に持たなくてはいけない必須部品以外は全てエンクロージャ側に移して共用することでスペース効率を稼ぐ、というのがブレードサーバの基本的なデザインである。

 一方、実は高密度実装を実現するために独自デザインを多用する関係もあり、ブレードサーバはコスト面では割高に付く。もちろん、ブレードの価格はサーバの値段としては比較的安いと言えるが、エンクロージャは数百万円という価格となる。Sunの例でいうと、B1600の標準構成での価格が320万円、ブレードは650MHz UltraSPARC IIi、512MBメモリ、30GB HDDの構成で27万2000円となっている。一方で、ローエンド1UサーバであるSun Fire V100は550MHz UltraSPARC IIi、256MBメモリ、40GB HDDで17万6000円なので、スペース効率を考えなければブレードサーバはコスト高な選択となる。

 ブレードサーバの市場性を考える上では、よく指摘される“iDCのスペースのコスト”の算定が欠かせない。もしも場所が余っていたり、設置スペースを削減してもコスト的なメリットが生まれないのであれば、ブレードサーバよりも1Uサーバを設置する方が低コストで済むことになる。ブレードサーバを使ってメリットがあるのは、たとえばもっとサーバの台数を増やしたいが設置場所が確保できない/設置場所を増やすコストがとても高価につく、といった事情のあるユーザーだと考えられる。

 問題は、この不況下でサーバ数の増加を必要としているユーザーがどのくらいいるのか、という点だ。この点に関しては筆者自身は具体的なデータを持ってはいないが、サンの担当者によれば「1Uサーバの売れ行きは順調で、目立った落ち込みは見られない」そうで、「需要は十分にある」と見ているという。筆者自身の実感としては、広告メールがかなり増えている印象は感じている。一時目立っていたウィルス添付メールはこのところ全く送られてこないが、代わりにHTMLメールが膨大に届くようになった。しかも大半が広告で、国内のみならず、英語のメールや中国語、韓国語のものまでバリエーションも豊富だ。内容も、オンラインショッピングサイトの宣伝から、アフリカの政府高官の親戚が困っていて云々といった詐欺としか思えないようなものまでさまざま届く。確かに、インターネットサーバの需要は不況といえども手堅いものがあるようには感じられる。ブレードサーバは米国でも注目の新プラットフォームだが、スペースに関わるコストが特に高額につくとされる日本の都心部には向いている。元来小さく作るのは日本の得意とするところだったが、話がことコンピュータとなるとどうしても米国主導で話が進むのが残念ではあるが、国内市場にブレードサーバが定着するかどうか興味深い。

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