ADSLやCATVを利用したインターネットアクセスサービスが普及するに伴い、ブロードバンドルータの新製品が続々登場してきた。そこで今回はブロードバンドルータの基本的な働きと、製品選びの決め手となるポイントについて解説しよう。
※月刊ASCII Digital Buyer8月号より転載。
ブロードバンドルータは何をしている?
すでにPCをLANでつないでいるユーザーなら、プライベートIPアドレスやグローバルIPアドレスという言葉を聞いたことがあるだろう。「IPアドレス」はネットワークでつながったPCを特定するための住所のようなものだ。重複しているとPCを特定できなくなってしまうため、ネットワークにつながるPCにはすべて別々のIPアドレスを割り当てなければならない。ところがIPアドレスには32bitのアドレス空間しかなく、ネットワークに接続しているすべてのPCに個別のIPアドレスを割り振れるほど余裕がないのが現状だ。いわゆる“IPアドレスの枯渇”というやつである。
そこでインターネットに直接つながっているPC(PCだけでなくあらゆるコンピュータやネットワーク機器すべて)にだけ“個別のIPアドレス”を割り振り、家庭内LANのような閉じたネットワークでは“好き勝手に割り振っていいIPアドレス”が用意されている。前者が「グローバルIPアドレス」で後者が「プライベートIPアドレス」である。
プロバイダから複数のグローバルIPアドレスの割り当てを受けていて(IPアドレスごとに追加料金が必要になるのが一般的)、各PCにグローバルIPアドレスを割り振っているなら、PCをつないでいるハブにADSLモデムやケーブルモデムをただ単に接続するだけで、すべての端末からインターネットにアクセスすることが可能になる。
ただし、この場合は“もはやLANではない”という点に注意したい。自分では家庭内にプライベートなネットワークを構築しているつもりでも、実際にはすべての端末(PC)がインターネットに直結している状態にあるのだ。ファイアウォールのような機能はどこにも用意されないことになるので、個々の端末ごとにきっちりとセキュリティ対策を行わなければならない。
一方、プライベートIPアドレスを使って構築したネットワークはインターネットと直接接続できない。なぜならプライベートIPアドレスの割り振られたPCがインターネット上のたとえばWebサーバにアクセスしても、そもそもそのIPアドレスを持った端末はインターネット上には存在しないはずなので、WebサーバはそのPCがどこに存在しているのかわからずデータを送り返すことができないのである。この“本来なら宛先不明になってしまうパケットがきちんとそのPC宛に届くようにする”というのがブロードバンドルータの仕事だ。