スループットベンチマーク結果
今回紹介した9機種を客観的に評価する指標として、WAN→LAN間のスループットを計測してみた。ベンチマークでは、ブロードバンドルータのWANポートとLANポートに、100BASE-TX対応のネットワークカードを装着したPCを接続した閉じた環境で、LAN側に接続したPCからWAN側のPC上のファイルをFTPで転送するのにかかった時間を測定した結果を図に示す。
ただしAterm WL20Rについては、LAN側インターフェイスとしてUSBポートあるいは無線LANしか搭載していないので、今回はUSB接続での結果を掲載している。
WAN-LAN間スループット実測値 |
WAN側に接続したサーバマシンはCPUにPentiumIII-800EBMHzを搭載し、OSはWindows 2000 Professional。またFTPサーバソフトとして、IISに含まれるFTPサービスを利用した。
クライアント側のPCはCPUにPentiumIII-1BGHzを採用し、OSにはWindows Millennium Editionをインストールした。FTPクライアントはMS-DOSプロンプト上で実行できるOSに標準で付属するコマンドラインのツールを利用した。ファイルの転送レートはFTPクライアントの表示する値を採用している。
ネットワークカードについては、サーバ側が3Comの「Fast EhterLink XL PCI TX」を、クライアント側がIntelの「PRO/100+ マネージメント・アダプタ」を使用した。ブロードバンドルータのLANポートに接続したクライアントマシンでは、ネットワークカードのスピード設定はオートネゴシエイションとし、WAN側に接続するサーバマシンでは、10Mbps・半二重に設定した。ただし、10BASE-T/100BASE-TX対応のWAN側ポートを装備するマイクロ総合研究所の「NetGenesis OPT」およびプラネックスコミュニケーションズの「bRoad Lanner BRL-04F」の2機種の計測では、サーバマシンもオートネゴシエイションの設定で計測した。
基本的にブロードバンドルータの設定はデフォルトから変更せず、クライアントPCのネットワークカードに割り当てたプライベートIPアドレスと、ブロードバンドルータのWAN側ポートに割り当てたグローバルIPアドレスとの間でNATが働くための最低限の設定だけを行っている。
以上の環境でサーバPC上の5MB、10MB、30MBの3つのサイズのZipファイルを、それぞれ3回ずつFTPのバイナリモードで転送したときの平均が上図だ。NetGenesis OPTの圧倒的なスループットが目を引くが、カタログスペックの30Mbpsには少し及ばなかった。とはいえ、現状のADSLやCATVで利用するには充分すぎるパフォーマンスだ。転送するファイルサイズをもっと大きくすれば、オーバーヘッドの影響が少なくなりより高速なスループットが得られたと思われる。それに続いたのは、bRoad Lanner BRL-04Fだ。こちらもカタログ値には少し及ばなかったが、ほぼ公称値どおりのスループットを示した。NetGenesis OPTがあまりにも飛び抜けているために、MN128-SOHO PAL B & Iの結果が低く見えるが、これでもCATVやADSLサービスで利用するには充分なスループットといえる。またAtermWL20RはLAN側がUSB接続となっているが、AtermWL20Rとほぼ同等の機能を持ち、LAN側インターフェイスに10BASE-T/100BASE-TX対応のスイッチングハブ機能を搭載する「AtermWB45RL」を100BASE-TXで接続して同様の環境でスループットを計測した結果は、2.96Mbpsであったことを参考までに記載しておく。なお、メルコの「BroadStation BLR-TX4」は今回の環境では動作が安定しなかったため、結果は掲載していない。
現在のCATVやADSLによるインターネット接続サービスを利用するなら、いずれの機種も充分なスループットを実現しているといえよう。ただし今後は「Yahoo! BB」やNTT東/西日本の「Bフレッツ」などのようなより高速なサービスも一般化してくると思われる。これらのサービスの利用を考慮にいれるなら、より高速な機器を選択しておくのもいいだろう。