このページの本文へ

ブロードバンドルータ完全ガイド

ブロードバンドルータ完全ガイド

2001年08月02日 22時04分更新

文● 山崎

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

IPアドレス変換によるインターネットアクセス

 図に示すようにブロードバンドルータはインターネット(WAN)とLANの間に存在しており、WAN側からはグローバルIPアドレスが割り振られた機器として、LAN側からはプライベートIPアドレスを持つ機器として見えている。LAN上のPCがインターネット上のWebサーバなどにアクセスしようとしてパケットを送り出すと、ブロードバンドルータはあたかもそれは自分が出したもののように、送り主のプライベートIPアドレスを自分のグローバルIPアドレスに書き換えてインターネット上に送り出す。ブロードバンドルータはそのパケットを実際に出したLAN上のPCを覚えておき、そのパケットに対する返事がインターネット上のサーバから返ってきたら、宛先を自分のグローバルIPアドレスから元の送り主のプライベートIPアドレスに書き換える。そのパケットをLAN上に送り出せばもとの持ち主に届くという仕組みだ。

アドレス変換を利用したインターネットへのアクセス。

 このIPアドレスの書き換えが“NAT”と呼ばれる技術だ。NATは一対一でのアドレス変換のことであり、LAN内の複数のPCからのパケットをそれぞれ区別してアドレス変換する技術は“IPマスカレード”と呼ばれる。この処理を効率的にこなせるブロードバンドルータが、いわゆるWAN→LAN間のスループットが高い製品ということになる。CATVインターネットやフレッツ・ADSLを利用している場合は最低でも2Mbps程度のスループットを実現している製品を選択したい。また、最大8Mbpsを謳う「Yahoo! BB」ではより高速なスループットを実現している製品でないと、せっかくの広帯域をフルに利用することはできない。さらに将来のFTTHなど、より高速なサービスの利用を視野に入れているユーザーは、数十Mbps程度のスループットを達成している製品が必要だろう。

パケットフィルタをはじめとする多くの付加機能

 このようにブロードバンドルータはLANとインターネットの接点の役割を果たしIPアドレスの変換を行うために、LANから出て行くパケットと入ってくるパケットをいちいちチェックしているのである。この際におかしなパケットがLANから外に出たり、逆に中に入り込まないようにチェックする仕事が、「パケットフィルタリング」である。ブロードバンドルータを導入するとセキュリティが向上するというのは、こういう働きがあるからだ。

 ただし、IPマスカレードおよびパケットフィルタリングを行うことで、ネットワークゲームやページャソフトの一部には動作しなくなるものがある。またLAN内に設置したサーバをインターネット側から参照することも不可能だ。これらを利用するには、ユーザーが“独自にパケットフィルタとIPアドレス変換テーブルを編集”する必要があるが、今回紹介しているすべての製品でこれらの機能はサポートされている。また、パケットフィルタを設定すれば、LANからインターネットへのアクセスを任意に制御できるので、LAN内の特定の端末からはインターネット上のWebページを閲覧することができないといったアクセス制限も可能になる。

 このほかでは、LAN上のPCに自動的にプライベートIPアドレスを割り振ることで、個々のPCのネットワーク設定を簡単に行えるDHCPサーバ機能や、逆にプロバイダからグローバルIPアドレスを割り振ってもらうDHCPクライアント機能などもすべての製品がサポートしている。さらにNTT東/西日本が提供しているフレッツ・ADSLで利用するPPPoE(PPP over Ethernet)も標準でサポートしているのが一般的であり、個々の製品間で機能的な差はほとんどなくなってきている。

 機能的な差がつきにくくなっている中で、強力なファイアウォール機能をウリにする製品も登場してきている。ヤマハの「NetVolante RTA54i」やネットギアの「 FR314」などでは、普段はすべてのポートを閉じてセキュリティを確保しながら、ネットワークゲームやページャソフトを利用するとブロードバンドルータ自身が動的にポートのオープン/クローズを行い、特別な設定を行わなくてもそれらのソフトを実行できる機能を搭載している。これによりセキュリティとユーザービリティの両立を可能としている。そのほかNetVolante RTA54iやエヌ・ティ・ティ エムイーの「 MN128-SOHO PAL B&I」などのようにブロードバンドアクセスだけでなくISDN回線をサポートしたり、NECの「 Aterm WL20R」のようにLAN側インターフェイスとして無線LAN機能を搭載するものなど、付加機能によって差別化を図っている製品もある。ブロードバンドルータを選ぶ際は、設定メニューの使いやすさやスループットなどに加え、これら付加的な要素も製品選択のポイントとなるだろう。

 ブロードバンドルータの導入にあたって注意したいのは、一部のインターネット接続業者では利用を禁止しているという点だ。ブロードバンドルータを購入する際には、自分が利用している接続サービスの内容と、実現したいインターネットアクセス環境を吟味し、必要な機能をサポートしている製品を選ぶようにしよう。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン