このページの本文へ

今さら人に聞けない! 最新PC/サーバー スペックガイド

統合進化するCPUとチップセット

2008年10月27日 04時00分更新

文● 塩田紳二

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

機能を特化したアクセラレーター

 マルチコアプロセッサーは、コア単体の実行効率や処理性能向上とコア数の増加の両面で性能を向上していく。しかし、システム性能はコア数と比例して大きくなるわけではない。OSやハードウェア構成(バス、メモリー、キャッシュサイズ)などによって違いはあるものの、どこかで頭打ちになるのは確実だ。しかし半導体の微細化はさらに進んでいくため、使用可能なトランジスタ数も増えていく。つまりトランジスタをどうやって有効に使うのかが問題となる

 現在考えられているのが、特定の計算処理に特化したプロセッサーコアの追加だ。プロセッサーは、どんな計算もそれなりにこなす万能タイプもあれば、特定の計算だけを速く処理できるものもある。そこで、さまざまな用途専用のコアを搭載すれば、各コアが得意分野の処理をすることで、システム全体の処理性能を上げることができる。また特定の計算に特化したコアは、電力効率の点でも優れているため、低消費電力化のトレンドにも合致している。

 このように複数の異種のコアが混在するマルチコアプロセッサーを「ヘテロジニアスマルチコア」という。対して、同種のコアからなるマルチコアを「ホモジニアスマルチコア」という。

 ヘテロジニアスマルチコアの代表といえば、PLAYSTATION 3に搭載されている「Cell Broadband Engine」である。Cellはメインの汎用的な処理を実行するコアのほかに、浮動小数点演算に特化した8つのコアを備え、合計で最大256GFlopsの性能を誇る。


GPUの演算能力をアクセラレーターとして利用

 実はAMDとインテルの両社も、ヘテロジニアスマルチコアを取り込む方向にある。両社とも、特定の処理に特化したコアを「アクセラレーター」と呼ぶ。アクセラレーターを搭載することで、たとえば、暗号化処理やTCP/IPの処理などが高速に実行できるようになる。

 またAMD、インテルとも、3Dグラフィックスプロセッサー(GPU)をアクセラレーターとして取り込む方針も打ち出している。第3回のグラフィックスのセクションで詳しく紹介するが、GPUを3Dグラフィックス以外に利用する方向性が出てきたのだ。

 以上のような方向性に加え、ヘテロジニアスマルチコアというCellのコンセプトとその性能、さらにはCPUへの周辺回路の統合(メモリーコントローラー)と、高速インターフェイスの組み合せを考えると、GPUをアクセラレーターとして扱うのは必然といえる。なぜなら現在のオンボードGPUは、メインメモリーの一部をビデオ用メモリーとして利用しているからだ。

 CPUにメモリーコントローラーが搭載されると、外部にあるGPUからはメモリーアクセスが困難になる。GPUからも高速にメモリーアクセスするためには、GPUもプロセッサーに統合するか、GPUとCPUを高速インターフェイスで接続するという構成が理にかなっている。

インテルのアクセラレータ構想

インテルのアクセラレーター構想。インテルのアクセラレーターには、メモリーコントローラーに接続するQuickAssistと、PCI Experssを改良したGeneseoの2つの接続方法が用意される

AMDのアクセラレーター構想

AMDのアクセラレーター構想。AMDはCPUの内部をモジュール化し、ブロック単位で自由な構成が可能なようにプロセッサーを開発、その中にGPUをモジュールとして統合していく

(次ページ「仮想化でも重要な役割を果たすCPU」に続く)

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード