超低消費電力プロセッサーの登場
ブロードバンド先進国の日本国内ではすでに有線によるインターネットが広く普及しているが、世界的に見ると、今後、無線を使って外出先からインターネットを利用する「モバイルインターネット」の普及が見込まれている。
モバイルインターネットの分野は、従来ノートPCが担ってきたが、さらに多くのユーザーを取り入れるためには、より小型のマシンが必要となる。そこで要求されるポイントが「長時間動作」だ。たかだか1~2時間の動作時間では、外出中の利用が心許ない。だがモバイルが前提なので、バッテリーを無制限に大きくするわけにはいかない。
マイクロソフトの「Origami」プロジェクトやインテルのUMPC(Ultra Mobile PC)は、まさにモバイルインターネットの分野を狙うものだ。サイズは、従来のノートPCと、PDA/スマートフォンの中間くらいに相当する。持ち歩きやすく、PCと同じ利用環境を提供しながら、携帯電話などと一線を画すためには、消費電力が小さく、小型化に適したプロセッサーとチップセットが必要になる。製品の実現には、従来と異なる考え方が必要だ。
これまでのプロセッサーは、性能向上のため、投機実行やアウトオブオーダー実行機能を取り込んできた。投機実行やアウトオブオーダー実行は複雑な動作であり、必要なトランジスタ数は大量になる。しかし性能は、投入したトランジスタに見合うほど上がってはいない。トランジスタ数は50%増えたのに、性能は30%程度しか向上していないのが実情だ。逆に投機実行やアウトオブオーダー実行の機能を使わなければ、絶対性能は下がるものの、トランジスタ数あたりの性能は上がることになる。トランジスタ数が少ないということは、省電力化に直結する。
インテルは2007年、「McCaslin」と呼ばれるプラットフォーム(プロセッサーはA110/100と呼ばれる)を提供し、2008年夏からは、さらに省電力化したAtomプロセッサー(コードネーム:Silverthorne)とチップセット(コードネーム:Poulsbo)からなるCentrino Atom(コードネーム:Menlow)プラットフォームの提供を開始している。Atomプロセッサーでは、アイドル動作時の消費電力が0.1Wと従来のCoreマイクロアーキテクチャーベースの製品に比べて格段に優れた省電力化を実現している。
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