ジャーナリスティックな視点で燃費データを集める
e燃費(http://e-nenpi.com/)
2008年08月25日 12時00分更新
月刊アスキー 2008年4月号掲載記事
iモードに適したコンテンツは何か
ガソリン価格の急騰が経済のみならず、政局まで揺るがす事態にまでなった。また環境問題の視点からも、ガソリン車の燃費向上が重要な課題である。そこで注目を集めているサービスが「e燃費」だ。ケータイで給油したガソリンの種類や価格を入力すると、自分の車の燃費を教えてくれる。車種ごとの平均燃費を知ることもできるし、同じ車種のなかで自分のエコ運転能力の位置づけもわかる。地域ごとに価格が安いガソリンスタンドがわかる機能も持っている。
このe燃費を考案したのは、自動車ニュースサイト「レスポンス」の編集長 三浦和也氏だ。三浦氏は'90年代に新車スクープで鳴らす自動車雑誌で編集者をしていた。しかし、彼の主な興味は自動車をとりまく社会問題やクルマのIT化にあった。登場したばかりのインターネットに夢中になり、編集部のホームページ運営を担当するが、それにあきたらずアスキーに転職。そこで自動車ニュース専門サイトを立ち上げる。
「コンテンツはメディアに合わせるべきだと思っている。当時の自分にはインターネットはニュースを読むのに最適なメディアに見えた。即時性が高くて、長い文章を読む場所ではない。それに短信ニュースだったら、1本あたり安く作れるはずだと」。読みはあたり、ページビューを伸ばした。そこにNTTドコモからiモード向けの企画依頼がきた。
「iモードはパソコンのインターネットとは違うモバイルメディアだから、安易に同じことをやるのはもったいないと感じた」。そこで注目したのが「燃費」。三浦氏自身、学生時代からダッシュボードにメモ帳を置き、満タン法で燃費を計ってきた。「クルマが好きな人なら多くがやっているクルマの健康管理帳。それをケータイで便利にする。クルマに乗るときは必ずケータイを持つし、ガソリンスタンドは地下にはないから電波も届く」。
ユーザーにとっての本当の燃費を求めた
さらに、燃費計測には三浦氏のジャーナリスティックな視点があった。自動車メーカーがカタログに掲載する「10・15モード燃費」は、国土交通省が定めたルールに則って計測されているが、ドライバーが実感している燃費と大きく異なるのはもはや常識だろう。「実用燃費の統計発表は社会にインパクトをあたえ、燃費技術が促進されるはずだ」。ひとりでも多くの人に使ってもらうためには広告ビジネスモデルが必要だった。「燃費を計測するためにオドメータの数字を申告してもらえる仕組みなので、たとえば3000キロごとにオイル交換など消耗品交換のアラートを出し、同時にその広告を出せばいい」。
深夜に思いついて企画メールを出し、すぐゴーサインがでた。しかしドコモサイドの反応は良くなかった。出版社が作ったコンテンツは欲しいが、どこの誰だかわからない人が入力したデータには価値は無いというのが理由だった。まだウェブ2.0という言葉が無い時代なので無理もない。そこで勝手サイトで立ち上げたところ、毎日千人単位で利用者が増え、公式サイトと認められた。現在は3キャリアに対応し、約40万の会員がいる。
「e燃費は環境という時流の真ん中にあって、さまざまな引き合いもあり、おかげでビジネスとして成立しつつ地球の役にも立てた。次のステップにいくために、クルマ好きだけを対象としない公共性、一般性を大事にしたい。だから2007年に作ったパソコン版は『カーライフナビ』として、環境貢献をうたってアクセス数も伸びている。社会の役に立っていればこそ、皆が助けてくれるのだと思います」。
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