女性やリピーターを重視した、新しい形の価格比較サイト
ECナビ(http://ecnavi.jp/)
2008年08月29日 12時00分更新
月刊アスキー 2008年6月号掲載記事
ECナビは、もともとは「MyID」という懸賞サイトだった。後発ながら先発サイトを抜き、懸賞サイトのトップになったが、2004年に事業を転換し、価格比較サイトとしてリスタートした。当時の価格比較サイトは、カカクコム(価格.com)が一人勝ちの状態だったが、あえてそこに乗り出し、成功を収めた。さらにソーシャルブックマークサイト「バザール(Buzzurl)」などCGM分野にも事業を広げている。
次々に新分野に乗り出すこの会社の旗振り役は社長の宇佐美進典氏だ。インターネットの可能性に目覚めたのは、就職2年後にソフトウェアベンチャーに転職して、コムデックス(当時世界最大規模のコンピュータ展示会)に行ったとき。「(ネットの凄さを)仕事として体感し、この部分を自分でやってみたい」と独立起業した。
'99年の10月に尾関茂雄氏の誘いを受けて、アクシブドットコムの創業に参加。11月に懸賞サイト「MyID」を立ち上げた。しかし、それからが紆余曲折だった。最初は、誰からどうやってお金をもらうか、イメージをつかめず、ビジネスモデルも二転三転した。半年続けて、ネットの広告のやり方が見えてきたが、赤字は1年半続き、ようやく単月黒字になったのが2001年6月。社長の座も尾崎氏から引き継いだ。
「その当時の懸賞サイトって、広告出しても効果無いのではとか、マニアが多いのでは、と言われてました。実際は一般ユーザーが多いのに、理解してもらえなかった」。
業界の未来を予測し、新しい競争ルールで挑む
同じ懸賞カテゴリの中で1位を目指した結果、その当時ナンバーワンだった「チャンスイット」を抜くこともできた。しかし、懸賞サイトは新規参入が多く、将来は業界の収益性が悪くなると思えた。
転機は2003年の12月にネットのニュースで、アメリカでは価格比較サイトが伸びていると読んで、「コレだ!」と思ったことだ。前述のとおり日本の価格比較サイトではカカクコムが圧倒的に強い。'97年にパソコン関連の価格比較で創業した同社は、ライバルがクローラーによってネットショップの情報を取得しているのに対し、店舗側が価格を登録する仕組みやクチコミ掲示板で差別化と高い集客力を保っている。
「日本ではカカクコムが強すぎて、他サイトが潰れることでイノベーションがなかった。海外では競争が厳しく、どんどん発展していた。それを見て、別の競争ルールを持ち込めば勝機があると思いました」。
ここで宇佐美氏は多角展開のひとつとしてではなく、メインの事業として価格比較にシフトする。「ECナビがうまくいかなかったら終わりだ、と背水の陣をしき、リサーチビジネスを除いて、女性向けサイトなど全部売却して、会社名も現在のECナビに変えました」。
その覚悟が実り、2005年3月に過去最高の業績を達成する。ところがその翌月急に事態が悪化した。メール広告の売上げが突然落ち込んだのだ。「ウェブ2.0の変化の中で、サイトの機能としては検索エンジン対策をやっていけばよいと思っていたんですが、実際の収益はウェブ1.0系に頼っていた」
そこで組織の改編に取り組んだ。「小さな組織でフットワークを軽く、たくさんチャレンジする方向へ変えました」。技術的なチャレンジのため、「ECナビラボ」も設立することで、CGM系サービスの立ち上げも行っている。結果、業績は回復。現在も成長を続けている。
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