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この新ビジネスに学べ! ネットの開拓者たち 第6回

個人のセンスが購買層を呼び込むCGM型ネット購入の仕組み

BuyMa(http://www.buyma.com/)

2008年09月10日 12時00分更新

文● 根岸智幸(ずばぴたテック) 写真●小林 伸

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月刊アスキー 2008年9月号掲載記事

BuyMaトップ画面

個人が見つけたセンスのいい商品やレアアイテムを取引するネット上のマーケットプレイス。一見ネットオークションに似ているが、取り扱う商品は新品のみで、またほかでは入手できないアイテムを求めてやってくるユーザーが多い。

 ネット上には新しいサービスが次々現れるが、多くは先行サービスの類似型で、独自のコンセプトを持って生まれたものは案外少ない。BuyMa(バイマ)は日本で生まれた、世界でも例のないコンセプトに基づくサービスだ。

 バイマはユーザー登録すれば誰でもバイヤーとなって自分がオススメする商品に値段を付けて登録できる。それに対し、ほかのユーザーが購入を申し込む。バイヤーは商品を仕入れて発送し、代金を受け取る仕組みだ。

 バイマのどこが画期的なのだろう? それは同じC to C型の売買サービスであるネットオークションと比べてみるとわかりやすい。オークションでは入札して競り落とすという行為が必要だが、バイマでは価格は一定で、先着順に購入できる。オークションではその性質上、不要品の取引が中心となるが、バイマでは新品のみを扱う。一般の店舗では売っていないレアアイテムを取引する場所という点では、両者は同じだが、オークションで人気を集めるアイテムはコレクター向けアイテムが主流なのに対し、バイマで人気を集めるにはオリジナリティや新規性、ファッション性などが重要となる。

 「オークションが不要品を売るフリーマーケットだとすると、バイマはセンスで選んだ商品で勝負するセレクトショップなんです」。バイマを運営する株式会社エニグモの創業者のひとりである須田将啓氏はそう説明する。実際バイヤーの70%が海外在住で、またキャビンアテンダントなど職業上、自然とセンスが磨かれるタイプの利用者が目立つという。

 一方、商品の購入者は単に商品を購入しているだけでなく、バイヤーが商品を選んだセンス=情報にお金を支払っている。「個人のセンス」を価値としてECサイトに結びつけた点こそバイマの画期的な部分である。

世界初のシステムを情熱と心意気で実現した

エニグモ 須田氏

株式会社エニグモ 代表取締役 共同最高経営責任者 須田将啓氏

 このバイマは須田氏の前職である博報堂時代の同僚、田中禎人氏(エニグモ共同最高経営責任者)のアイデアから始まった。田中氏は帰国子女でMBA取得の留学をした経験から、海外の商品を国内で気軽に買えない状況を打破するシステムを考えた。同時に日本で知られていない商品を紹介し販売する場にもなるとも思った。

 一方、須田氏は常々新事業を興したいと考えていた。理工学部の大学院でITの最先端を行く研究をしていたが、ブレイクスルーを生み出すには「技術を研究するよりも、ビジネスの現場のほうがずっと早い」ことに気づき、マーケティングの勉強も兼ねて博報堂に就職。そこで田中氏と出会った。

 「このサービスはいける」。そう考えた二人はアイデアを練った。当初は須田氏が自分で作ろうと考えていたが、必要なシステムの規模が拡大したため、二人で会社を興し、資金を集め、システム会社に発注することにした。

 難関は決済システムだった。詐欺行為が起こらないように、クレジットカードを使って購入申し込み時に与信だけを確保し、決済が確定するとお金が振り込まれるシステムを考案した。ただしそれまでのクレジットカードの常識では実際にバイヤーに振り込まれるのに最大90日もかかった。そこであるクレジット会社に頼み込み、決済を10日単位で対応してもらった。

 ベンチャー企業がクレジット会社に新しい仕組みとなるサービスを開始してもらうのは大変なはずだ。「理詰めだと『今、ウチがやる必要はない』と言われてしまう。だから最後はパッションでしたね。まずは『面白い』と思ってもらえるようになり、実際に始めてもらえることになりました」。新しいことをやりたい。情熱と心意気が世界初のサービスを実現したのだ。

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