激戦のグルメ界を勝ち抜いた後発サイトのスピード戦略とは?
食べログ.com(http://tabelog.com/)
2008年09月01日 12時00分更新
月刊アスキー 2008年7月号掲載記事
競争が激しいグルメサイトで先行組を抜き去る
多数の人気サイトがひしめくグルメサイトの中でここ最近急速に伸びているのが株式会社カカクコムが運営する「食べログ.com」(以下、食べログ)だ。
日本のグルメサイトの老舗は「ぐるなび」で圧倒的なシェアと売上高を誇る。しかし、ぐるなびは地道な営業活動で飲食店を回り、契約を結んだ店舗の詳細情報を掲載するという典型的なウェブ1.0型サービスである。
ユーザーのクチコミによる初期のグルメサイトは'96年にさとなお氏が始めたジバランが著名だが、これは手作りのサイトだった。ユーザーがリアルタイムに投稿できる本格的なクチコミサイトは、アスクユーの「東京レストランガイド」('97年スタート、現在は全国展開されている)と「東京グルメ」(同2000年、後のライブドアグルメ)が多くの利用者を集めていた。2005年にスタートした「食べログ.com」は2006年後半から急速に成長し、2008年3月現在では月間521万UU(ユニークユーザー)の巨大サイトに成長し、先行サイトを抜き去った。
食べログを立ち上げたのは、カカクコム事業開発部長の村上敦浩氏。学生時代は音楽にハマり、「サラリーマンは格好悪い」とすら思っていた。卒業後はフリーターになるが、思い直して半年後に外資系ITコンサルティング会社に就職し、大企業への業務改革・システム導入をする仕事についた。ここでも、仕事よりもプライベートの音楽を優先していたが、やがて責任のあるポジションについて両立できなくなってしまい退職する。そして海外レーベルからアルバムリリースまで果たす一方、前職のプロジェクトと業務契約でコンサルティングの仕事を請け負うようになる。収入は良かったが、外注だと仕事の核心に触れることができない。30才前にして、起業したいと考え、まずはベンチャーで経験を積みたいとカカクコムに転職した。
開発スピードとユーザー側の姿勢にこだわり
当時のカカクコムは家電やパソコンなど耐久消費財がメインだった。これから新しいジャンルに進出するところで、事業を進める人を募集していた。村上氏が入社したとき、いくつか予定されたプロジェクトがあり、そこからグルメサイトを選び、企画を考えた。
もちろん元から食べるのは好きで、コンサルティング会社時代もランチは2時間ぐらいかけていた。新入社員に東京グルメでお店を調べさせて、青山のオフィスからタクシーで赤阪まで行くこともあった。自身も東京グルメのユーザーとしてレビューを書き込んだこともある。
「グルメサイトをやることになったとき、本当にこれからみんなが使うサイトは、東京グルメかアスクユーのようなユーザー側に立つサイトだと思いました。その2つのサイトをベンチマークに、不便だなーと思っていたところの改善を凄いスピードで実現しました。それができたのは、一緒にやってきたエンジニアが優秀だったのと、2人で意思決定して即座に開発できたからだと思います」
最初はその2人だけでサイトを作っていた。サイトのプロデュースだけでなく、デザインやHTMLの作成、ユーザーからの要望・クレーム対応など、システム開発以外はすべて自分でやった。また、クチコミサイトとしての中立性にこだわっている。飲食店からのクレームがあっても良い書き込みも悪い書き込みも掲載を続けた。
一方で、4月には店舗側もクチコミに返答できる仕組みを始めた。「お店側も情報発信して、ユーザーと飲食店がつながるコミュニケーションプラットフォームにしていきたい」と考えている。
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