ただクリエイティブであることが独自サービスを成功させる秘訣
面白法人カヤック(http://www.kayac.com/)
2008年09月20日 12時00分更新
月刊アスキー 2008年10月号掲載記事
ユニークなウェブサイトを作って独自のビジネスを展開する。言うのは簡単でも実行するのは容易ではない。ところが創業以来、次々と新しいサービスを生み出し続け、成長し続ける会社がある。それが面白法人カヤックだ。
例えば「T-SELECT」。誰でもTシャツのデザイナーになって、オリジナルデザインを販売できるサービスだ。ユーザーはデザイナー登録後(無料)、デザインを作成し、応募する。これをサイトに掲載してもらい、購入希望者が10人を超えると実際に生産され、デザイン報酬を受け取ることができる。
「Tシャツ」や「デザイン」をテーマにしたコンシューマーによるメディアという点でオリジナリティがあり、しかも「デザイン報酬」という収入も、「生産化」「販売」というユーザーインセンティブもある。このサービスは、ライブドアに売却した上でカヤックは運営代行によるレベニューシェア(利益分配)で収益を上げている。
総務や労務、経理など、会社の実務を支える人たちが集まって、知識を共有するコミュニティ「総務の森」も、コクヨの子会社でOA機器などを販売する通販会社のカウネットに売却。カヤックは運営を請け負って収益化している。
社員全員がクリエイター ゼロから生み出していく力
ほかにも多くのサービスがある。絵画を面積で測り売りする「アートメーター」、注文建築をオーダーしたい人と建築家をマッチングする「HOUSECO」、音声版のニコニコ動画のような「こえ部」など。
ただ、カヤックのサービスのすべてに明確なモデルがあるわけではない。面白いけどビジネスになりそうもないサービスもある。「サービスを企画するときは、マーケティングを一番には考えない」とカヤックの柳澤大輔氏は言う。「ネットは直感的なメディアなので、企画も直感的に入っていくことが多い」と言うのだ。例えば、T-SELECTは企画当時に新バージョンのウェブブラウザが登場し、ブラウザ上から画像を簡単にアップロードできるようになったことがヒントとなった。こえ部もFlashを使えば特別な機材がなくても、実現できると気づいたことから始まった。こえ部の企画に積極的な社員は最初2人だけ。試しに作ってみたら面白くて発展してきた。最近は鎌倉にある本社ビルの1階にどんぶりカフェを開いたり、由比ヶ浜に海の家を開いたりと、ユニークな活動は広がり続けている。
まるで、いい加減にやったことが偶然成功してきたように見えるが、背後にはポリシーがある。「打率は正直低いです。でも、確実にヒットを飛ばし続ける会社は少ない。だからとにかく数を打つ。失敗を恐れない」。
面白法人カヤックは、クリエイティブであることに徹底的にこだわる。社員の名刺には、社長以下全員に「クリエイター」という肩書きが入る。管理系の仕事といえども“ルールを作るクリエイター”だからだ。企画も人まねではなく、オリジナル性にこだわる。しかも、成功したサービスは手元に置かずに売ってしまうことも多い。
「愛着があるけど、売ることで自分を追い込み、新しいサービスを作る。それが自分たちの社会におけるポジションだと思っているから。ゼロから1を生み出す部分を担当し、1から100にする部分は、ビジネスが得意な企業に任せる」。柳澤氏は学生のころから起業を志していたが、ビジネスを熱く語ったり、世の中を変えたいとは言わない。「クリエイターというのはモノを作っていくアスリートみたいなものだと思う。カヤックはそういうアスリートが集まる場所にしたい」。
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