目も耳も鼻も使う。職人の勘を身につける
マニュアルがない……という“困難”に加えて、リレー式の保守は感覚的な部分も多く、その感覚的な部分を引き継ぐのが難しいと若手は口を揃える。しかし、そこには現在のコンピュータでは味わえない楽しさもあるのだと加えた。
「リレーの保守は音などの感覚を頼りにする部分も多く、そこは現在のコンピュータでは、ほとんどない部分ですね。OBに『この音覚えておくように』とよく言われますが、その音の単発だけではほとんど違いが分かりません。そうすると、OBが加減算と開平算(ルートの値を求める)のプログラムを続けて実行してくれる。すると、加減算を演算するのにコンピュータは0.35Secかかり、開平算は2.00Secかかることから、演算速度(時間)の違いによる“音の違い”なんだなと分かります」(若手・濱田さん)
また、OBの池田さんいわく、実際に点検作業として、触覚や視覚、嗅覚もいわゆる動物的感覚をかなり使うという。例えば、リレーの点検として、銅版部分を手で押してみて、その反発具合でバネ圧を調整したり、リレーの接点部分の火花や匂いから磨耗部分を見つけたりするのだ。延命プロジェクトでは、今後のための作業のドキュメント化も目的であるが、それだけに留まらず、OBから若手に直接指導するようにしているのは、この“感覚部分”を伝える点にあるのだ。
(次ページに続く)
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