マニュアルではなく、設計図・回路図を頼りに保守する
「FACOM-138A」と「FACOM-128B」は「リレー計算機」と言われる電気計算機で、リレー(継電器)というスイッチで、データを記憶させたり、回路の組み合わせによって演算などできる機能を持っている。リレー計算機は1938年ドイツで製作されたのが初めとされ、富士通では1953年に国産第一号の計算機を完成させたという。
富士通でこの伝統ある計算機の「延命プロジェクト」をスタートさせたのは2006年。以来3、4カ月に一度のペースで保守などの技術伝承の実作業が行なわれているという。「最古級コンピュータ」ということでギネスへの挑戦を意識しながら、最大の目標としているのは技術的遺産として後世に残すことなのだそうだ。若手に技術を伝承する貴重な機会としている。
取材した5月23日は、富士通川崎工場「Fujitsu Technology Hall」にあるFACOM-138Aを使い、OB3人が若手3人に保守方法などレクチャー。OB・池田さんは技術の伝承が容易ではないことを話してくれた。
「FACOM-138Aにはマニュアルがありません。あるのは設計図やブロック図、回路図、タイムチャートといった紙図面だけ。しかも、アーキテクチャ(構造)が現在のものとは大きく異なります。素子1つとっても、電話交換機などで使われていたリレーを使っている。若手の人たちにとっては、まったく馴染みのないものばかりなので、定期点検をしながら、1つ1つの部品単位で教えています」(OB・池田さん)
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