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キャリア・ピックアップ 第66回

『「上司」という仕事のつとめ方』著者に聞く

「完璧な上司なんて、いませんよ」

2008年10月31日 04時00分更新

文● 中村宏美

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松山 淳(まつやまじゅん)氏プロフィール

東京生まれ。広告代理店勤務を経て、中小企業の経営を支援するアースシップ・コンサルティングを2002年に設立。「リーダーが変われば日本の未来が変わる」を自らの理念として、経営者あるいは中間管理職へのコンサルティングを開始する。2003年にはじめたメルマガ「リーダーへ贈る108通の手紙」は様々な苦悩を抱えたビジネスリーダーを慰め、勇気づける内容が話題となった。現在は、経営者・起業家・中間管理職などを対象にした個別カウンセリング、講演、研修活動などで活躍中。

若手上司を悩ます世代ギャップ


―― 若手管理職のうつ病が増えているそうですね。

松山 淳氏

松山 淳氏

 うつの発病は30代が多いんです。私に相談を寄せてくる方も、その世代が多い。いまの30代~40代の中間管理職層をとり巻く環境が、いろいろな意味で厳しさを増していますから。

 この10年で日本の企業風土はずいぶん変化しました。成果主義の導入による過度の競争意識、株主重視と社員軽視の傾向、正社員と派遣社員の格差……そういった問題の大波をまともに受けているのがこの世代の管理職なんです。

―― 職場のコミュニケーションも激変した、と指摘されてますね。

 社内コミュニケーションの問題で言うと、ひとつはWindows 95が分水嶺になっています。パソコンが一般的になってから情報伝達の形式がずいぶん変わりましたよね。私も含めて、いまの30代後半以降の人間というのはWindows 95以降でホームページやメールを始めた世代です。だからそれ以前の仕事の進め方も少しはわかっている。たとえば営業部であれば、得意先の電話番号はほとんど暗記していた世代です。

―― 電話で話して顔を合わせて仕事を進めていた。

 ところが、それ以降の携帯世代は違います。話すよりメールで済ませたい。ダイレクトなコミュニケーションを敬遠する傾向が強い。まずは、その世代ギャップがあるんです。

 もうひとつ、この2~3年は企業業績が少し上向いていたせいで、新人採用を再開した会社が多い。派遣社員もたくさん使うようになってきた。そのために、30代の社員が管理職層になってきた。これまでの10年間は部下がいなかったのに、突然に多くの部下を抱えた中間管理職になってしまったんです。そこでも軋みが出ていますね。

―― 上司として初めて抱えた部下が新人の「困ったちゃん」だったりする。

 電話が鳴っても取らないで、好きな本を読んでいる。飲み会に誘っても拒否される。それでいて、仕事ができないのは自分の潜在能力を引き出す上司がいないからだ、とか言う。携帯依存症で、携帯電話がないと手が震え出してしまう。自己愛が強く、離職率が高い。……そういう若い部下をもって悩んでいる管理職はたくさんいます。逆に、とても優秀な若手が部下になったせいで、あおられて自分の価値が否定されたように感じてしまうケースもあります。

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