古いからといって侮ってはいけない! 今に生かされる「設計思想」
延命プロジェクトによる技術の引き継ぎは、OBから若手に講義をする形式ではなく、若手からその都度出てくる疑問などに機械に触れながら直接指導するというものだ。熱のこもるOBの指導に若手も積極的に応えているという。
「まだ保守というレベルではなく、1年半でやっとFACOM-138Aに慣れたというところです。ほとんど障害が起きないので、あまりチャンスはありませんが、長年保守をしてきたOBが持っている『絶対直してやる』という技術者魂も引き継ぎたいと思います」(若手・二瓶さん)
「設計者の池田敏雄さんが書いた資料なども読み、すぐれた設計思想も学ぼうと考えています。演算方式の変換にしても、私たちが思いもよらない方法を使っていたりするし、あそこまでコンパクトに収めた設計にも驚かされます」(若手・児玉さん)
何十年も安定して稼動する設計開発がなされたコンピュータ。モノのサイクルが早くなっている現在では、見逃されがちな部分であろう。
「FACOM-138AとFACOM-128Bの両機械に言えることですが、その設計は“リレー”というものが非常によく理解された上でのものでした。例えば、リレーの弱点である接続不良への対応(リレーの接点を2玉にするなど)がしっかりとされている。実際に現役の頃も故障がほとんどありませんでした。演算処理に一晩かかるのですが、演算プログラムをかけてから、そのまま機械に安心して任せて家に帰ってしまったりしました」(OB・池田さん)
リレー式は、すでに何世代も前の技術になっている。しかし、先人が築き上げていた技術者としての姿勢や、部品の弱点をフォローして安定稼動させるアイデアなどは、新しい技術への財産になるはずだ。富士通の延命プロジェクトにあるOBの想いは、若手にしっかりと引き継がれているようだ。昨今、団塊世代の大量退職など取りざたされたが、開発メーカーが若手に伝えていくべき「先人の技術や想い」を、うまく伝えているケースと言えるだろう。
- ■取材協力
富士通(株)
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