NTTドコモの「土管屋気質」が……
1992年にNTTドコモ(当時:NTT移動通信網)はNTTから移動通信事業を譲り受けて以来、これまで「iモード」や「おサイフケータイ」などの新サービスを展開し、日本のケータイ業界をリードしてきた。だが、2006年10月のMNP(番号ポータビリティ制度)開始以降は苦戦を強いられていることから、戦略と組織体制を大きく見直すことになった。
7月には地域会社を統合し、全国1社の経営運営体制とするとともに経営陣も刷新する。こうした動きの中で、“iモード・おサイフケータイの父”夏野剛氏や、iモード生みの親の一人である榎啓一氏が、同社を去ることも明らかになっている。これらの動向について、ケータイ業界に詳しいITライターの法林岳之氏は次のように語る。

法林岳之氏
Web媒体や雑誌などを中心に、携帯電話やパソコンなどのデジタル関連製品のレビュー、ビギナー向けの解説記事執筆などで活躍
「これまでNTTドコモはケータイのフロンティアとして数々の新サービス開発にチャレンジしてきましたが、それでもNTTグループに特有の“土管屋(通信インフラ業者)”気質がある企業です。今夏の統合や体制見直しによって、その土管屋気質が強まるように思えます。また、夏野氏が去ることで、エンターテイメント分野のサービス攻勢で他社に若干遅れを取るようになるかもしれません。つまり、エンターテイメント性は薄れることになりますが、DCMX(クレジットサービス)のようにケータイを便利な道具として誰もが使える根幹サービスは増強されていくのではないでしょうか」
今後のケータイの世界を切り開いていくキャリアは
ケータイ市場の飽和状態は目前と言われる現在、NTTドコモが他社に乗り換えたユーザーを取り戻す──シェアを回復することは困難なことであろう。それは、同社が既存顧客重視すなわち解約率の低下を目指す方向性を掲げたことからもうかがえる。それでは、方向転換しゆくNTTドコモに代り、今後のケータイの世界を切り開いていくキャリアはどこか。法林氏はKDDIだと言う。
「KDDIが過去に着手してきたGPSやLISMOなどを振り返ると、サービス・端末・インフラを含めて“すぐに使える”形で提供してきました。それを踏まえると、KCP+やLISMO Videoの開発が遅れていたり、シェア争いで苦戦していると言われる現状は、大きなジャンプをする力をためている状況と考えることができます。同社はマーケティングが上手く、インターネットで使われているモノをアレンジするのが得意なので、新しいケータイの世界の開拓をリードしていくことでしょう。後はそれを、どのように普及させていくか。特に、薄い50代以上の層へのアピールがカギとなるでしょうね」
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