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業界研究レポート 第5回

ケータイ業界・前編

変わるケータイ業界 各社の思惑

2008年05月29日 11時10分更新

文● 斉藤邦雄(大空出版)

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ソフトバンクの囲い込み戦法

 ソフトバンクモバイルは昨年1月に基本使用料980円の「ホワイトプラン」を投入し、「使用料が安い」イメージを浸透させて新規契約者を増やしてきた。今年2月には学生向けに基本使用料が3年間無料の「ホワイト学割」を開始し、この勢いを加速させるとともに、これまで薄かった若年層の取り込み・囲い込みを図った。

 結果、契約者純増数で12カ月連続トップを達成。また、3月からはディズニーと提携して「ディズニー・モバイル」を開始し、20~30代の女性層の取り込みを強化していく構えだ。さらに同社は、中国移動通信(チャイナモバイル)や英ボーダフォンと連合し、ケータイのインターネット基盤技術を開発していくとしている。

KDDIには陰り?

 過去4年間、年ベースで純増数トップだったKDDIは、ソフトバンクモバイルの人気に押され、1月にPC連動型の新サービス「au Smart Sports」を開始した他、3月から「家族割」と「誰でも割」(または「スマイルハート割引」)の併用ユーザーは国内の家族通話を無料化するなどして、純増数を持ち直してきた。

 しかし、W42Kの電池パック発火問題、新プラットフォーム「KCP+(ケイ・シー・ピー・プラス)」開発の遅れによる新型端末の遅れ、端末の購入法を選べる「au買い方セレクト」の周知不足などにより、勢いに陰りが見えるとの声も出ている。なお、auとツーカーを合わせたKDDIグループの4月の契約数が11万8700件の純減となっているが、同社は主原因をツーカーのサービス終了とプリペイド端末無料配布分の有効期限切れに伴う減数としている。

NTTドコモ一人負け

 こうした2社の攻勢に対し、NTTドコモは昨年11月に新しい端末販売制度「バリューコース」「ベーシックコース」を開始し、今年4月からは国内の家族通話の無料化の導入によって契約者数の減少に歯止めをかけたが、一人負けという結果に終わった。

 これを受けて同社は、ブランドロゴを刷新し、既存顧客の満足度を高める戦略へ切り替えるとともに、営業本部制を廃止してフラットな組織を目指すことを発表している。また、法人向けサービスや海外事業への出資などを拡大し、収入モデルの多様化を目指すという。こうしたNTTドコモの大幅な戦略転換は、凋落傾向にある同社にとって“起死回生の策”となるだろうか。

ケータイ業界

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(次ページに続く)

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