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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第15回

「初音ミク」について、改めて考えてみる

2008年01月31日 09時00分更新

文● 編集部、語り●津田大介(ジャーナリスト)

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ネタとして盛り上がれた


── ニコニコ動画もその人気を押し上げましたよね?

津田 ええ。初音ミクのヒットは、ニコニコ動画抜きでは語れません。

 ニコニコ動画では、最初は一般曲のカバーという形で、初音ミクにいろいろな歌を歌わせた映像が投稿され、そのうちにオリジナル曲が出てきました。

 初音ミクのオリジナル曲がよかったのは、曲そのものというより、アマチュアユーザーが「初音ミク」という魅力的な「素材」を使って全身全霊を傾けて作品を作り、それがリアルタイムでネット上で直接評価されるという状況が生まれたことでしょう。その中で、さまざまなユーザーが創作に向かい、全体としての完成度を上げていく。そうしたネットならではのいいスパイラルがあったんだと思います。

 「ネタとして盛り上がれるかどうか」ということが重視されるニコニコ動画の世界では、プロが片手間に初音ミクという素材を使って作るより、アマチュアでも面白い作品を作った人間の方が評価される。

 そうしたユーザー間で投稿と評価を繰り返すうちに、作品としての質の高いものも生まれてくるという流れがあるんじゃないかと思います。誰かが投稿した動画が、初音ミクのプロモーションになって、さらに「初音ミクで曲を作って盛り上がりたい」というユーザーを増やしていった。

みくみくにしてあげる

初音ミクでいちばん有名な曲は「【初音ミク】みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」。1月30日時点で再生数は345万以上。ニコニコ動画内で最も再生数が多い


── ニコニコ動画内では、発売以降にものすごい勢いで投稿数が増えていきましたよね。

津田 僕が面白いなと思うのは、ニコニコ動画の外で、初音ミクを使いこなすノウハウがすごい勢いでネットに蓄積されていったところですね。

 多くの「職人」が、どのようにすれば彼女をうまく歌わせることができるのかという技術的なノウハウを公開し、それを参考にそれぞれのユーザーが知識を蓄積していって、さらに作品のクオリティーに反映されていく。

 まさにCGMのパワーによって、全体の質がものすごい勢いで上がっていた希有な成功事例だと思います。

 また、ニコニコ動画では、不完全なところがあったら、別のユーザーが補完してくれる。例えば曲を作るスキルは持っていても、Flashの動画を作ったり、初音ミクの絵を描けない人は誰か別の人が勝手に作業してくれるといった感じです。新たな価値をどんどん付け加えていけるところも、ニコニコ動画という場の魅力でしょう。

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