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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第4回

ニコニコ市場は、ネットの新しい「投げ銭」だ

2007年09月27日 00時00分更新

文● 編集部、語り●津田大介(ITジャーナリスト)

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ニコニコ動画と同じコンセプト


── 「ニコニコブックマーク(β)」の第一印象はいかがでしょう?

津田 面白いサービスだと思います。コメントを付けたり、ツッコミを入れることによってみんなで楽しむという「ニコニコ動画」のコンセプトを、ウェブサイトに当てはめたようなサービスなので、ニコニコ動画に慣れたユーザーは入っていきやすいでしょう。

 とはいうものの、同じコメントといっても、ニコニコブックマークとニコニコ動画では使われ方が違う部分もありますよね。

 大きなポイントは、ニコニコ動画は、最初にユーザーがコンテンツを作ってアップロードするというアクションがあり、その上でみんながコメントするという構造が成り立っています。

 一方で、ニコニコブックマークは、誰かが何かを作ってアップロードするのではなく、既存のウェブページをキャプチャーした上にコメントが乗せられていく。最初の行動が自発的じゃないというのは、結構大きな違いじゃないかなと思ってます。

 現状では、ウェブサイトへのいたずら書きや、きびしい突っ込みというネガティブな使われ方のほうが多い感じですね。このままの状況が続くようだとユーザーはいずれ飽きてしまうかもしれません。この状態をどうポジティブな面白さに変換していくのか、そこの部分に興味があります。



ニコニコ市場が「Perfume」のCDを売りまくった!?


── ニコニコブックマークの「兄」のような存在である、ニコニコ動画はどう思われますか?

津田 個人的に注目しているのは「ニコニコ市場」ですね(関連記事12)。

 ニコニコ市場は、ネットにおける「投げ銭」の新しい可能性を示したと思います。著作権侵害の問題は置いておいて、ニコニコ市場の登場以後、ニコニコ動画では、ユーザーが面白い、興味深いと思ったコンテンツを購入することで、コンテンツの作者や著作権者にお金を渡すことができるようになりました。

「ニコニコ市場(β)」は、ニコニコ動画の各ムービーに関連した商品をユーザー自身が登録し、Amazonで購入できるというサービス。写真左のように各動画の下段に商品リンクが表示されるほか、写真右のようなニコニコ市場の専用ページも設けられている


── そんなに売れるものなんでしょうか?

津田 中には、著作権者側も無視できないケースも出てきてます。例えば、最近だと「Perfume」という3人組のアイドルグループが挙げられるでしょう。もともとPerfumeはニコニコ動画で人気が高く、MADムービーの「素材」として使われる機会が多かったんです。

 MADムービーは、公衆送信権と同一性保持という点で二重に著作権を侵害しているのが大きな問題ですが、一方で、そのMADムービーのニコニコ市場を見ると、MAD内に使われた動画に関連した著作物がよく売れていたりします。

MADムービー 既存の映像や音楽を個人が切り貼りし、再構成した作品。ニコニコ動画では、アニメやゲームの映像を切り貼りしたオリジナルのプロモーションビデオなど、MADムービーが頻繁にアップロードされている。

 Perfumeの場合は、それらのMADムービーが、プロモーションのような役割を果たしたのか、9月12日発売の「ポリリズム」というシングルCDは、発売前に300人くらいが予約していました(ニコニコ市場のページ)。

 このニコニコ市場での予約結果に呼応するように、ポリリズムは発売後、オリコンのCD売り上げランキングで、デイリー4位、ウィークリー7位という好結果を収めています。デイリー4位の数字は3000枚くらいでしたから、その10分の1はニコニコ経由で買われていると。

 ご存知のように、オリコンのランキングは、音楽業界がCDの売上調査において重視している存在です。ニコニコ市場がそのオリコンに影響を与えるということは、著作権者側も決して無視できない力を持ってきたということでしょう。


(次ページに続く)

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