16日、米国ポップス界の女王である人気歌手「マドンナ」が、所属レーベルを移籍したという発表があった。彼女が古巣であるワーナー・ミュージックを離れて移った先は、なんとレコード会社ではなく、イベント/ライブ運営を手掛ける「ライブ・ネーション」という企業だ。
大物アーティストの「脱レコード会社」という、あまり前例のないニュースだけあって、音楽業界にどんな影響を及ぼすのか気になるところだろう。アーティスト側は今、どういったアクションを起こしていて、どう変わろうとしているのか、ITジャーナリストの津田大介氏に話を聞いた。
【解説】マドンナ(Madonna)
1958年、米国生まれのアーティスト。1984年発売のセカンドアルバム「ライク・ア・ヴァージン」は全世界で2000万枚以上のセールスを記録し、ポピュラーミュージックの女王としての地位を固める。「マリリン・モンローの再来」とも称され、ファッションリーダーやセックス・シンボルとして大きな影響力を持つ。2006年には、初代iPod nanoの発売記念イベントにもビデオチャットで登場した(関連記事)
CDではなく、ライブで稼ぐ
── マドンナのような大物アーティストがレーベルを独立するということは、何を意味しているのでしょうか?
津田 マドンナはこれまでかなり長い間ワーナーミュージックと契約していましたが、今回それを解消してライブ・ネーションに移籍することになりました。
このニュースを最初に報じたウォールストリート・ジャーナルによれば、契約内容は総額1億2000万ドル(約140億円)という大きな金額で、契約によって、ライブ・ネーションはマドンナのスタジオアルバム3枚分をリリースする権利と、コンサートツアー関連商品の販売権を獲得しました。その代わりに、マドンナ側は契約金と株式を受け取っています。
通常140億円をCD販売だけで稼ぐとなると、いくらマドンナとはいえ、3枚のオリジナルアルバムでこれだけ稼ぐのはかなり難しい。しかし、ライブビジネスの興行権を一手に握るとなると話は別です。ライブ・ネーション側は、マドンナのネームバリューとアーティストパワーがあれば、ライブ興業で十分回収できると踏んで、この契約を行なったんでしょう。
そもそもCDビジネスに重きを置いてないという意味で考えれば、プリンスが今年7月に行ったように限りなく無料に近いコストでアルバムをばらまいて、ライブツアーの収益を最大化させることも考えているかもしれません。
(次ページに続く)

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