AI規制に向けた動きが広がっている。
2023年4月28日のロイターによれば、欧州連合(EU)は、AIの利用に関する規制の草案について、予備的な合意に至った。欧州での議論は、規制法案の詳しい内容を詰める段階に進んでいる。
米国では、国家電気通信情報庁が4月11日、AIに対する規制について、広く意見を募集する手続きを始めた。
4月29日、30日には、群馬県高崎市でG7群馬高崎デジタル・技術大臣会合が開かれ、「責任あるAIとAIガバナンスの推進」も議題のひとつに取り上げられた。
G7を期に、日本も規制の導入に向かっていくのだろうか。
専門家による事前の検証を目指す米国
チャットを生成するOpenAIのAIシステム「ChatGPT」を含むAI技術で先行する米国でも、AI規制に向けた議論が始まっている。
国家電気通信情報庁が広く意見を募る意図として、同庁のウェブサイトに詳しい説明が公開されている。
同庁の説明を整理すると、意見募集の背景には、AIシステムについて、企業や団体の主張どおりに機能するかどうか、信頼性を確保するための仕組みを構築するという考えがあるようだ。
AIがどのようなデータを基に、どのようなアルゴリズムで判断するかについては、一般のユーザーにはわからない。
この点についても、ChatGPTの日本語のサイトに興味深い記述がある。
ChatGPTのサイトには、「答えられる質問」、「答えられない質問」、「信ぴょう性の低い回答をする質問」が例示されている。
「答えられる質問」の例
- 30代の女性が同僚からもらって喜ぶプレゼント
- 人生の意味
- エクセルで漢字にふりがなをふるマクロ
「答えられない質問」の例
- 株価の予測
- 個人名を特定して居場所を探してもらう
「信ぴょう性の低い回答をする質問」の例
- おすすめの店
- 変化の激しい国際情勢
- 文章の添削
「できること」と「苦手なこと」を例示するウェブ上の説明も、米国の当局が言う「信頼性の確保」と深く関連するものであるように見える。
ただ、外部からは、仕組みが非公開である限り、「本当のところはどうなのか」という疑問はなかなかぬぐえない。
米国の当局が目指す規制は、主張どおりに機能するAIを担保するための監査、評価、認証の仕組みの構築だ。
4月14日のロイターによれば、米民主党上院のシューマー院内総務は、AI技術を公開、更新する前に専門家による検証、実験を義務付けることを提案しているという。国家電気通信情報庁と、米民主党が目指す規制の方向性は、一致しているようだ。
EUは情報源の開示迫る
EUのAI規制法案は、2021年4月に公表された法案がベースとなる。
EUの法案は、以下の機能を含むAIについて「許容できないリスク」があるとして、禁止の対象とする方向だ。
- サブリミナルな技法
- 脆弱性を利用
- 公的機関のソーシャルスコアリング
- リアルタイム遠隔生体識別
この法案が公表されたのは、2年前のことだ。当時はまだ、ChatGPTは登場していなかった。
昨年11月にChatGPTが登場し、その自然すぎる対話の流れに、一気に注目と懸念が高まった。
EUは、ChatGPTの登場による環境の激変を踏まえ、法案の最終化を進めるとみられており、AIを構築するうえで使用した「情報源の開示」を求める案が浮上している。
たとえば、自然な会話の流れを学習するには、AIに小説や映画の脚本などのテキストデータを学習させたかもしれない。
AIが学習したコンテンツが著作権の対象だった場合、著作物の使用料が発生しうるという考え方が背景にある。
ChatGPTの日本語のサイトには、「Web上にある」テキストデータを使用していると明記されており、すでにEUにおける議論に対する予防線を張っているようにも見える。
最終的なAI規制法案に情報源の開示が盛り込まれるかは、まだわからない。
ただ、テクノロジーに対するさまざまな規制においてEUが先行し、各国がEUに準ずる規制を導入する流れがあるため、EUの動きには常に注目しておく必要がある。
「振興、推進、適切な規制」の日本
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