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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第225回

みずほ、LINE銀行断念 楽天との関係深める

2023年04月03日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 LINEとみずほ銀行が、新しい銀行の設立を断念した。

 LINEとみずほフィナンシャル・グループが2023年3月30日、計画の中止を発表した。

 新銀行計画の中止に至った理由については、プレスリリースに次のように述べられている。

 「安全・安心で利便性の高いサービス提供には、更なる時間と追加投資が必要であり、お客さまのご期待に沿うサービスのスムーズなご提供が、現時点では見通せない」

 新銀行計画を取り巻く現状を端的に示す内容ではあるが、両社を取り巻く環境は、計画発表から約4年4ヵ月が経過する間に大きく変化した。

相次ぐ環境変化

 LINEとみずほフィナンシャルグループは、2018年11月に新銀行計画を発表し、2019年5月に「LINE Bank設立準備会社」を設立した。

 設立準備会社には、LINE傘下の「LINE Financial」が51%、みずほ銀行が49%を出資している。

 設立準備会社をつくった時点では、「2020年度中」の新銀行設立が事業開始の目標とされていた。「2020年度中」は、2021年3月末までに事業を始めると読み替えることができる。

 2023年3月の時点で振り返ると、最初の段階で計画に遅れが生じていたことが分かる。

 計画が遅れた要因は、設立準備会社の設立から約半年後に表面化したヤフーとLINEの経営統合だろう。

 2019年11月、ソフトバンク傘下のZホールディングスとLINEが経営統合する計画が明らかになった。

 Zホールディングスの傘下にはヤフーグループがある。ヤフーとLINEは統合前、多くのサービスで競合関係にあった。

 こうしたサービスの中で、新銀行との関係がとくに深い分野は、QRコード決済のPayPayとLINE Payだろう。

 2つのQR決済についても、2023年以降にPayPayに統合されることが方針が明らかになっている。

 さらに、2023年2月には、Zホールディングス、LINE、ヤフーの3社が2023年度中に合併する方針が決まった。

 これまで、Zホールディングスの傘下にLINEとヤフーが併存する形態が温存されてきたたが、今後1年以内にZ、LINE、ヤフーの3社は1つの会社になる。

 Zホールディングス傘下には、すでに銀行業を展開するPayPay銀行がある。

 そうなると、仮にLINE Bankが新銀行として誕生した場合、同じ会社内に銀行業を担う会社が2社存在することになる。

 これまでのLINE Bankを取り巻く環境変化を整理してみると、「新銀行断念」はとても自然な流れの中で決定されたように映る。

楽天との関係深めるみずほ

 PayPay銀行は、3メガバンクのうち三井住友フィナンシャルグループとの関係が深い。

 2022年12月の時点で、PayPay銀行株のうち75.28%をZフィナンシャルが、21.54%を三井住友銀行が保有している。

 これに対して、LINE Bankの設立準備会社は、すでに述べた通りLINE Financialが51%、みずほ銀行が49%を保有している。

 LINEとほぼ対等な立ち位置で新銀行の設立を目指してきた、みずほフィナンシャルグループは最近、楽天グループとの関係をさらに深めている。

 楽天グループが携帯電話事業で苦悩する中、2022年10月には、みずほ証券が楽天証券の普通株式の19.99%を取得した。

 3メガバンクの競争という構図で見ると、楽天・みずほvsPayPay・三井住友の構図に整理したほうが分かりやすいうえに、競争の観点からも健全だろう。

楽天とソフトバンク

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