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アスキー腕時計人気ブランド図鑑 第9回

絶対に後悔しない腕時計選びのために──名門時計ブランド・その魅力と定番モデル

新たな一歩を踏み出す腕時計人気ブランド「ブライトリング」 クロノマットの実現とその歴史

2019年01月24日 10時00分更新

文● 渋谷ヤスヒト

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1995年からスイス2大時計フェア、時計ブランドの取材を始め、気がついたら20数年。スイス、日本を問わずあらゆる時計ブランドの時計作りを取材してきた時計ジャーナリストの渋谷ヤスヒトです。この連載では、時計業界の絶対的な名門ブランドと定番モデル、その魅力と歴史を紹介します。

バーゼルワールド2018でのブライトリング・ブース。昨年まで魚が泳ぐアクアリウムだった場所はディスプレイに変わり、空・海・陸と3分野の製品を展開する新しいブランドコンセプトが告知されています。

 クロノグラフを得意とする時計ブランドは数多くありますが、パイロットたちに最も愛用されてきたのがブライトリング。その歴史は、創業者からその孫まで3代、後継者2代に渡り引き継がれた「クロノグラフ」と「空」への並々ならぬ情熱に彩られています。今回は130年を超えるその偉大な歩みをご紹介します。

Part1:クロノグラフへの類まれなる情熱

 1860年に現在も時計産業の本拠地のひとつ、スイス・ジュラ地方に生まれた創業者のレオン・ブライトリング。農閑期には時計作りを行うこの地方で彼は時計作りに優れた才能を発揮。時計の専門技術を学んだ後に1884年、24歳でサン・ティミエに時計のアトリエを開きます。ブライトリングの歴史はここから始まったのです。

創業者レオン・ブライトリングと彼が製作した懐中クロノグラフ。

 この時代、スイスでは彼のような若い時計師による起業が競って行われていました。まだ懐中時計の時代でしたが、海外への輸出は好調で、スイス時計は劇的に進化。そしてレオン・ブライトリングが情熱を注いだのは、経過時間の計測ができるクロノグラフの開発でした。そして彼の製品は、当時各地で開催されていた産業博覧会で数々の賞を獲得します。

 またこの時代は「鳥のように空を飛びたい」という人類の長年の夢が、飛行機の開発で実現する直前でした。気球はすでに実用化されていましたが、飛行機の開発競争が世界中で行われていました。そして、時計に加えて飛行機もレオン・ブライトリングの並々ならぬ情熱だったと伝えられています。

1892年、ラ・ショー・ド・フォンのモンブリラン通りの工房のイラストと当時の懐中クロノグラフのパーツ図。

 レオン・ブライトリングのクロノグラフは評判となり、1892年、工房は時計産業の中心地ラ・ショー・ド・フォンのモンブリラン通りに移転。同社は大きく発展することになります。そしてレオンの抱いた「空への夢」は、息子であるガストン・ブライトリングに引き継がれ、やがて航空用計器の開発・製造という形で実現することになります。

Part2:腕時計クロノグラフの誕生

 1914年、父・レオンの死でブライトリング社を引き継いだガストン・ブライトリングは、父と同様にクロノグラフへの情熱を原動力に、会社を飛躍的に発展させます。そのきっかけは1915年に開発した腕時計クロノグラフ「30分タイマー」でした。2インダイヤル、9時位置にスモールセコンド、3時位置に30分積算計が付いていて、クロノグラフのスタート&ストップとリセットを2時位置の専用プッシュボタンで行います。

1914年のガストン・ブライトリング。

この年に開発された「30分タイマー」。

自動車用のダッシュボード・クロノグラフ「ヴィテッセ」。ブランドロゴはまだ文字盤にはありません。

 このモデルはパイロットのために開発されたものでしたが、最初の顧客となったのは警察と軍でした。1923年には、「スタートとストップ」と「リセット」の操作系統を分離し、さらにクロノグラフ機能を使いやすくした新モデルを開発。クロノグラフの分野でブライトリングの地位は確固たるものとなります。

 父の夢を確かなものにしたガストン・ブライトリングでしたが、彼が会社を継いだ1914年に第一次世界大戦が勃発。航空機が兵器として本格的に使われたこの戦争でヨーロッパは混乱。時計市場は壊滅的な打撃を受けます。しかしガストンはこうした状況にめげず、当時、本格的に普及が始まった自動車向けのダッシュボードクロックなど、さまざまな用途、職種向けのクロノグラフを開発・製造し、一流クロノグラフメーカーの地位を確立していきます。

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