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アスキー腕時計人気ブランド図鑑 第5回

絶対に後悔しない腕時計選びのために──名門時計ブランド・その魅力と定番モデル

タグ・ホイヤー物語~世界初1/100秒の計測を実現 モータースポーツとともに進化した腕時計

2018年11月17日 12時00分更新

文● 渋谷ヤスヒト

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モータースポーツファンの間で、タグ・ホイヤーほど人気&知名度の高い時計ブランドはないでしょう。今も人気のアイルトン・セナを筆頭に、タグ・ホイヤーの歴史はモータースポーツの伝説で彩られています。実際、タグ・ホイヤーほどスポーツ、特にモータースポーツと親密な関係を築いてきた時計ブランドは他にありません。まずはその歴史と魅力をご紹介します。

世界最大の時計宝飾フェア「バーゼルワールド2018」のタグ・ホイヤーブース。フェアで最も注目されているブランドのひとつだ。

現代クロノグラフの基本機構を開発

 タグ・ホイヤーの歴史は1840年生まれのドイツ系スイス人、時計師のエドワード・ホイヤーが、1860年、若干20歳のときにエドワード・ホイヤー・ウォッチメイカーズという会社をスイス・サンティミエに設立したところから始まります。彼は16歳からこの町にある時計関連会社で働いており、その実績と経験をもとに自分の時計工房を立ち上げたのです。

創業者エドワード・ホイヤー。

1864年から1867年頃のエドワード・ホイヤーの工房。当時、スイスの時計産業は世界を市場に発展を続けていた。

 創業者エドワードは1869年に初の特許を取得。1883年にはアムステルダム万国博覧会に懐中時計を出展して銀賞を受賞するなど、優れた時計師でした。当時は懐中時計の時代。スイスの時計産業が時計王国アメリカに追いつき追い越せと努力を重ね、世界中に販路を拡大していた時期でした。そして1887年、エドワード・ホイヤーはクロノグラフ機構に関して画期的な発明を成し遂げ、特許を取得します。それが現在も機械式クロノグラフの基本機構として広く使われている「振動ピニオン(スイングピニオン)」です。

エドワード・ホイヤーが開発した振動ピニオンは最新の自社製クロノグラフムーブメント「キャリバー1887」でも使われている。

振動ピニオン(搭載されているのは右側の小さなもの)

 クロノグラフは通常の時計機構に加えて、経過時間を測定するためのクロノグラフ(ストップウォッチ)機構を備えた腕時計です。一般的にはリュウズの上下にこの機構を操作する2つのボタン、スタート&ストップボタンとリセットボタンがあります、そしてムーブメントの中には、いつも動いている時計機構の歯車輪列と、経過時間の計測の時だけ使うクロノグラフ機構の歯車輪列、2つの歯車輪列があります。

 クロノグラフ機構の歯車輪列は、動力をつないだり切ったりするクラッチ機構を通じて、時計機構の歯車輪列から動力をもらって動きます。具体的には、リュウズの上のスタート&ストップボタンを1回押すと、クラッチがつながりクロノグラフ機構の輪列が動き出して計測が始まり、もう1回押すとクラッチが切れて計測が止まります。つまり、スタート&ストップボタンは、このクラッチの切り替えを制御しているのです。

 そしてこのクラッチの中心になるのが、時計機構と一緒に常に回転しているトランスミッションホイールと、このトランスミッションホイールとかみ合うクロノグラフランナーという、水平に並んだ2つの歯車です。この2つをかみ合わせたり離したりすることで、クロノグラフ機構はスタート、ストップするのです。

 それまで使われてきたクラッチ機構では、このトランスミッションホイールに比較的大きな歯車が使われていました。そのため機械的なパワーロスが大きく、クロノグラフ機構を動作させると時計の精度が格段に悪くなる、機構が大きくてムーブメントも大きくなってしまうなど、さまざまな問題がありました。しかしエドワード・ホイヤーは、この歯車に小さく歯数の少ないピニオンという歯車を使う新しいクラッチ機構を発明。このロスを少なく、またムーブメントのサイズを小さくすることに成功したのです。

 最近では2つの歯車を水平ではなく上下に並べて、上下の動きでかみ合わせる垂直クラッチ機構が高級クロノグラフの主流になりつつあります。しかし一般的な機械式クロノグラフでは現在もこの振動ピニオンが広く使われています。タグ・ホイヤーが2010年に開発し、多くのクロノグラフモデルに搭載している自社製ムーブメント「キャリバー1887」(その後「キャリバーホイヤー01」に発展)にもこの振動ピニオンが採用されています。つまり、エドワード・ホイヤーは現代クロノグラフ機構の「父」とも言える存在なのです。

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