スマートフォンをスペックや使い勝手ではなく、「フェアトレード」の観点から作り上げたFairphone。パーツを自分で交換できるモジュラーフォンともいえる製品をリリースしています。Fairphoneはどのようにして生まれたのか、そして今後どのような製品が出てくるのか。同社の歴史を追いかけます。
発展途上国に「フェア」な先進国向けスマートフォン
世界中で販売されているスマートフォンも、製品になるまでに発展途上国の人々のかかわりは無視できません。中国や東南アジアの製造工場では若年者の不当労働行為がたびたび報道されますし、スマートフォンの部品に使われる貴金属類はアフリカなどの環境の悪い鉱山で採取されたうえ、不当に安い価格で取引されることもあります。特にコンゴ周辺で採集されるタンタル、タングステン、スズ、金の4つの金属は「紛争鉱物」と呼ばれ、武装集団の資金源にもなっています。
先進国が途上国を搾取するかのような、不当な行為を無くすこと、それをフェアトレードと言います。Fairphoneはそのフェアトレードを考えるオランダのデザイナー、Bas van Abelが発案した製品で、部品調達から製造ルート、そしてコストまで明らかにできる部分はすべてオープンにするとされました。
またスマートフォンを1~2年おきに買い替えることも、資源の無駄遣いだけではなく紛争鉱物の発掘を勧めるものになってしまいます。Fairphoneはスマートフォンの部品だけを交換することで新しいスペックの製品にアップグレードできることも考慮されました。なおグーグルが2013年11月に「Project Ara」を発表するなど、スマートフォンの廃棄問題とリユースによる解決はその後社会から注目されるようになります。
さてFairphone初のスマートフォン「Fairphone 1」は2013年5月に製品がアナウンスされました。クラウドファンディングでは1万人以上の出資者が集まり、11月までに2万5000台を受付け、12月から出荷されました。スペックは4.3型960x540ドットディスプレーにSoCがメディアテックMT6589クアッドコア1.2GHz、メモリー1GB、ストレージ16GB、メインカメラ800万画素、フロントカメラ130万画素、2000mAhバッテリー。本体サイズは126x63.5x10mm、170g。価格は345ユーロでした。
この連載の記事
- 第129回 マイクロソフトと喧嘩別れか イギリスのスマホメーカー・Sendoの歴史
- 第128回 韓国スマホ市場でたった2年だけ圧倒的な人気を博した「LUNA」
- 第127回 ウォークマンと肩を並べた音楽プレーヤーIriverはかつてスマホも作っていた
- 第126回 実は日本ブランド・パイオニアのスマホが中国で脚光を浴びていた
- 第125回 LGのスマホ事業はどうなる? 5G対応モデルでライバルたちを追い抜けるか
- 第124回 ポルトガルの特産品コルクを使ったぬくもりあふれるスマートフォン・IKI Mobile
- 第123回 世界初の折れ曲がるスマホ「FlexPai」はこうして生まれた
- 第122回 カメラ機能無しスマホで地位を確立したシンガポール・iNO mobile
- 第121回 世界最強の強度を誇るスマホは中国で生まれた BlackViewの一貫した製品展開
- 第120回 表も裏側もスマートフォン 両面端末に夢を託したメーカー・Siswoo
- この連載の一覧へ