世界初の携帯電話を開発したモトローラですが、スマートフォン市場ではなかなか頭角をあらわせず、モバイル製品部門はグーグルへの買収を経て、現在はレノボの傘下となっています。
2016年になり、合体式スマートフォン「Moto Z」が大きな話題を集めていますが、老舗のメーカーらしく、過去には栄光に酔いしれる時期もありました。
スマートフォンの元祖の時代から高性能端末を送り出してきたモトローラの、苦難に満ちた歴史を振り返ってみます。
スマホの原型は2001年から! PDA型端末で人気を得る
モトローラの名前は古くからの携帯電話ファンにとってはおなじみのものでしょう。日本でも「スタータック」など、数々の名機を販売してきました。頭文字を取った「M」のロゴマーク、これを見ただけでぐっとくる人も多いはず。
最近ではアメリカで「Droid」シリーズがヒットを飛ばし、グーグル時代にはNexusスマートフォンも手がけていました。しかし、スマートフォン市場ではなかなかシェアを伸ばすことができず、実は鳴かず飛ばずの時代を長く経験しているのです。
携帯電話で通話だけを利用するのではなく、スケジュールを見たり、長文をスラスラと入力したい、と考えるユーザーが増え始めた2000年前後、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)と呼ばれる製品が多数登場しました。
そのPDA機能を携帯電話に融合した製品も携帯電話メーカー各社から登場します。いまのスマートフォンの黎明期であり、アプリを入れたりネット接続はできないものの、QWERTYキーボードやスタイラスペンを使うタッチパネルを搭載し、高度な携帯電話としてビジネスパーソンを中心に人気を集めていったのです。
モトローラは1999年に320×240ドットのモノクロタッチパネルを搭載した「Accompli 6188」を発売します。画面サイズは2型程度でしたが、付属のペンを使って手書きで文字が書けたり、電話帳やスケジュールアプリを呼び出せるなど画期的な製品でした。しかも、縦開きのフリップカバースタイルで、閉じれば誤操作も防げたのです。
続けて、2001年に横折りたたみ型でQWERTYキーボードを備えた「Accompli 009」も登場。こちらは240×160ドット、CSTNの4096色という「色の付いた小型画面」程度のディスプレーを搭載していましたが、キーボードからサクサクと文章を打つことも可能だったのです。
初期のモトローラは、このPDA機能内蔵端末にAccompliのブランドを使っていました。その後は複数のモデル展開を行ないますが、2003年発売の「Accompli 388c」が最後の製品となります。
この388cはスポーツカーのようなデザインをしており、見た目だけでも非常に目立つ製品でした。ディスプレーも約6万5000色のTFTとなり、スケジュールの曜日の色分けなども見やすくなりました。当時はこの388cを持っているだけで仕事のできるビジネスパーソン、あるいは最先端のモデルを使いこなすアーリーアダプタユーザーと思われたに違いありません。
このAccompliシリーズが終了したのは、2002年からノキアがSymbian OSを本格的に採用しはじめたからでしょう。高性能端末は「タッチパネルの使える高機能携帯電話」から「アプリやカメラが使えるスマートフォン」へと、ついにOSを搭載するスマートフォンへの移行が始まったのです。
しかし、ここからモトローラのスマートフォン戦略は混迷を極めます。
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