Ryzen 7 9850X3D、ゲーミング最強CPUの座を防衛する
筆者はX3Dシリーズが出てくると多数のゲームでパフォーマンス比較することが多かったが、Ryzen 9 9950X3D2ばかりは例外である。時間的制約が厳しかったせいもあるが、AMDがデュアル3D V-Cache搭載モデルを出さなかった説明の正しさを数サンプルで実感できてしまったから、という理由の方が大きい。
そもそもAMDはゲーマーにRyzen 9 9950X3D2をアピールしていないのだから、ゲームにおいてRyzen 7 9850X3Dを上回ることができなくても別に問題はない。だがRyzen 9 9950X3D2をゲーミングCPUの希望と捉えていた人には残念な話だ。F1 25やOverwatchといった例外はあるものの、多くの状況においてRyzen 7 9850X3Dは安定して強い。Core Ultra 7 270K Plusはやや残念な結果になることも多かったが、これはゲーム次第といったところ。
ゲームの性能においてRyzen 9 9950X3D2がRyzen 7 9850X3Dに完敗した理由をいくつか考えてみよう。まずRyzen 9 9950X3D2が持つ2基のCCDそれぞれに3D V-Cacheがあっても、あるコアからアクセスできる3D V-Cacheは自分のCCDの下にある3D V-Cacheのみで、隣のCCD側の3D V-Cacheにはリーチできない、というRyzen特有の問題がある。アクセスしようとしても盛大なレイテンシーが挟まるため現実的ではない(コア間レイテンシーに関しては前編記事を参照)。
そもそもPCゲーム自体の処理は8コアで十分なことが多い。次の図は前編でも紹介した「PRAGMATA」での動作状況だが、負荷が集中しているのはコア番号1〜8まで。つまり8コアあれば足りるわけだ。コア9〜16はゲームのためというよりも、バックグラウンドで動作するサービスやツール(「OBS Studio」や「Discord」など)のためのものといえる。
今回の検証でAMDがRyzen 9 9950X3D2をゲーマーにアピールしなかった判断は正しかったし、これまでAMDがしてきた説明(3D V-Cacheを2基載せてもゲームで効果がない)は、決して出し惜しみしているわけではなく真実だったのだ、と理解できたことだろう。
ではなぜわざわざRyzenという形でデュアル3D V-Cache構成のモデルを出したのだろうか? 前編の検証で判明した通り、シミュレーションや数値計算系の処理において、Ryzen 9 9950X3D2は異様に強いシチュエーションが存在する。それならSocket AM5版EPYCとして売った方がよかったのでは?
しかしそういった処理を真面目に取り組むような人はメモリー帯域の太いEPYCを選択するだろう。Socket SP3のEPYC 7373Xは16コア+3D V-Cache構成であり、かつL3キャッシュ容量は768MBとRyzen以上に大きい。
さらにEPYC 7373Xは8chメモリーであり、メモリー帯域を太く(DDR4-3200x8で204.8GB/sec。RyzenだとDDR5-5600x2で89.6GB/sec)できる。PCI Express 5.0が使えることがRyzen 9 9950X3D2のメリットだが、数値計算やシミュレーション用途の場合はL3キャッシュ容量やメモリー帯域、メモリー搭載最大容量の方が重要だ。
つまりRyzen 9 9950X3D2はEPYCとして出すには少々押し出しが弱い製品であり、さりとてホビースト向けに推せるほどコストを下げられない。セミプロあるいはプロシューマーにアピールせざるを得ないのであると筆者は考えている。
とはいえ、Zen 5世代Ryzenの最終進化系がRyzen 9 9950X3D2であることには変わらない。そこは評価してもいいだろう。
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