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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第25回

【JSTnews8月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業CREST/研究領域「細胞操作」/研究課題「DNAイベントレコーダー細胞」

特定の運命を持つ細胞を取り出す新手法で、再生医療などへの応用に期待

2025年08月18日 12時00分更新

文● 中條将典

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 生物学や医学研究では「複雑な多細胞システムにおいて、いつどこでどのような変化や進化が起きているのか」を調べようとしますが、多くの未解決問題があります。たとえば出芽酵母を実験室内で進化させてみても、どのような変異を獲得することが環境の中で優勢になっていくのかを直接観測することが難しいです。

 この問題を解決する手法の1つが、「遡及(そきゅう)的クローン単離」です。対象とする集団それぞれの細胞にあらかじめ目印(DNAバーコード)を付けておき、これを増殖させて2群に分けます。片方の集団から特定のDNAバーコードを持つ細胞クローンが興味深い振る舞いをすることが観察された時に、もう片方の集団の事前状態から同じDNAバーコードを持つ細胞を取り出して調べることで、あたかも特定の運命を持つ細胞を過去に遡って分析したかのように知ることができます。大阪大学の谷内江望特任教授らの研究チームは今回、この手法論を大幅に改良した「クローン選択法」を考案しました。この手法の優れた点は、ゲノム編集を応用することで特定のDNAバーコードを持つ細胞だけが蛍光を発するようにし、狙った細胞を高精度に分離できるところです。

 これにより、抗がん剤の投与に対してがん細胞がどのように振る舞うかといった、長いスパンで細胞の挙動を調べられるようになります。また、幹細胞生物学、再生医療、進化生物学など幅広い分野への貢献が期待されます。

クローン選択法では、それぞれのDNAバーコードと開始コドンを破壊した緑色蛍光遺伝子EGFPを隣り合わせに配置し、標的となるDNAバーコードを持つ細胞のみに対し、CRISPR一塩基ゲノム編集で開始コドンを修復して蛍光を出させる(右)。

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