【JSTnews5月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業ALCA-Next 技術領域「エネルギー変換・蓄エネルギー」/研究課題「欠陥を反応場とする革新的アンモニアクラッキング」
低温でのアンモニア分解性能を向上、水素利用技術の進展に期待
2026年05月25日 12時00分更新
アンモニアは近年、クリーンなエネルギーである水素を高密度で安全に貯蔵・輸送できる媒体として注目されています。しかし、アンモニアを分解して水素を取り出すには、高温で反応させるか、希少で高価な貴金属であるルテニウム(Ru)を触媒として使う必要があります。
東京科学大学総合研究院の北野政明教授らの研究チームは、ニッケル(Ni)やコバルト(Co)を触媒として固定する枠組みにケイ化バリウム(BaSi₂)を用いることで、低温でRu触媒に匹敵するアンモニア分解活性を達成しました。NiやCoをアンモニア分解の触媒に使う研究はこれまでも行われてきましたが、低温での作動は困難とされてきました。研究チームは、BaSi₂が、ケイ素(Si)原子間で共有結合を形成すると同時に、バリウム(Ba)からSiへの電荷移動が生じることで全体としてイオン結晶的な性質を示すことに着目。NiやCoに対してより強く電子を与える性質を持つことからアンモニア分解活性を向上できると考え、この仮説を実験で示しました。さらに、反応後の触媒をX線光電子分光で分析し、これらの触媒では、BaSi₂の境界面において、Baとアンモニア由来の窒素、NiやCoとで構成する中間体が形成されることで、高い触媒性能が得られることを示しました。
非貴金属触媒を低温でも効率良く作動させられることを明らかにした今回の研究成果は、今後の触媒の設計指針となり得るものです。水素利用技術の進展を通じて、カーボンニュートラル社会の実現にも寄与することが期待されます。
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