このページの本文へ

科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第94回

【JSTnews5月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業ALCA-Next 技術領域「エネルギー変換・蓄エネルギー」/研究課題「欠陥を反応場とする革新的アンモニアクラッキング」

低温でのアンモニア分解性能を向上、水素利用技術の進展に期待

2026年05月25日 12時00分更新

文● 中條将典

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 アンモニアは近年、クリーンなエネルギーである水素を高密度で安全に貯蔵・輸送できる媒体として注目されています。しかし、アンモニアを分解して水素を取り出すには、高温で反応させるか、希少で高価な貴金属であるルテニウム(Ru)を触媒として使う必要があります。

 東京科学大学総合研究院の北野政明教授らの研究チームは、ニッケル(Ni)やコバルト(Co)を触媒として固定する枠組みにケイ化バリウム(BaSi₂)を用いることで、低温でRu触媒に匹敵するアンモニア分解活性を達成しました。NiやCoをアンモニア分解の触媒に使う研究はこれまでも行われてきましたが、低温での作動は困難とされてきました。研究チームは、BaSi₂が、ケイ素(Si)原子間で共有結合を形成すると同時に、バリウム(Ba)からSiへの電荷移動が生じることで全体としてイオン結晶的な性質を示すことに着目。NiやCoに対してより強く電子を与える性質を持つことからアンモニア分解活性を向上できると考え、この仮説を実験で示しました。さらに、反応後の触媒をX線光電子分光で分析し、これらの触媒では、BaSi₂の境界面において、Baとアンモニア由来の窒素、NiやCoとで構成する中間体が形成されることで、高い触媒性能が得られることを示しました。

 非貴金属触媒を低温でも効率良く作動させられることを明らかにした今回の研究成果は、今後の触媒の設計指針となり得るものです。水素利用技術の進展を通じて、カーボンニュートラル社会の実現にも寄与することが期待されます。

ケイ化バリウム(BaSi₂)にNiを固定した触媒(Ni/BaSi₂)を用いた際のアンモニア分解の反応温度と分解率(赤い線)。他の触媒(Ni/BaSi₂O₅)に比べて低温で高効率に分離できる。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    ITトピック

    実用化が楽しみすぎるスマート技術たち 「長距離ワイヤレス給電」から「室内向け太陽電池」「超音波センサー」まで

  2. 2位

    ビジネス・開発

    富士ソフトがエンジニア1万人超を「AIネイティブ」化 実装力を武器にフィジカルAIなど3本柱に注力

  3. 3位

    sponsored

    AIインフラ市場“一強体制”を崩せるか AMDが「Helios」で体現するオープン戦略とフィジカルAIのラストマイル

  4. 4位

    ITトピック

    IT技術者の8割超「AI生成コードには人間のレビューが必要」/「偽・誤情報を見破れる」と自信を持つ人はICTリテラシーテストの正答率が低い、ほか

  5. 5位

    ITトピック

    6.4万人の熱狂をAIが導く FIFA W杯全スタジアム「デジタルツイン」化が変えた観戦体験

  6. 6位

    デジタル

    買い切り型クラウド「pCloud」がDX総合EXPOへ CEO来日で日本展開を加速

  7. 7位

    Team Leaders

    SharePointリストへの登録データを、CSVファイル形式に成形/変換して自動保存する方法

  8. 8位

    TECH

    攻撃するAIと防御するAI 日本企業のセキュリティ対策にいま何が必要か?

  9. 9位

    ITトピック

    「クロスの定義とは?」 AIに“サッカー言語”を教えることから始まった、FIFAとLenovoの協業

  10. 10位

    ビジネス

    開発案件の立ち上げを「60分から1分」に ソースコード管理も一本化したKDLのBacklog活用術

集計期間:
2026年07月16日~2026年07月22日
  • 角川アスキー総合研究所