【JSTnews5月号掲載】NEWS&TOPICS 創発的研究支援事業 研究課題「クローン性造血を介した加齢性心血管病の病態解明」
加齢に伴う血液の変化が大動脈瘤を悪化させる仕組みを解明
2026年05月26日 12時00分更新
大動脈がこぶ状に広がる大動脈瘤(りゅう)は、加齢とともに発症リスクが高まり、破裂した場合には突然死に至ることもある重い病気です。現在、有効な薬物治療はなく、手術が主な治療法となっています。一方で近年、加齢に伴って造血細胞に遺伝子変異が生じた特定の血液細胞が増える現象であるクローン性造血が、心血管疾患の新たな危険因子となっていることが注目されています。
名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学の由良義充助教らの研究チームは、腹部大動脈瘤とクローン性造血との関連に着目。腹部大動脈瘤の手術予定患者の血液から採取したDNAを解析し、クローン性造血がある患者では、腹部大動脈瘤の拡大速度がより速いことを示しました。さらに、マウスを用いた実験により、クローン性造血が腹部大動脈瘤の拡大を促進することや、クローン性造血の原因遺伝子の1つであるTet2に変異を持つ免疫細胞が骨を分解する細胞に似た性質を獲得して血管壁の弾力を保つエラスチンを分解することで、腹部大動脈瘤を悪化させることを解明しました。また、この過程に関与するシグナルの伝達を、遺伝学的手法または阻害剤により抑制することで、動物モデルで腹部大動脈瘤の進行が抑えられることがわかりました。
今回の成果は、腹部大動脈瘤において、血液の加齢性変化という新たな視点から病態を捉え、内科的な治療戦略開発への道筋を示すものです。クローン性造血の患者に対するフォローアップにも役立つ可能性があります。
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