【JSTnews5月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業ERATO 深津共生進化機構プロジェクト
酵素遺伝子の喪失がカギとなる、大腸菌がカメムシ共生細菌へ変化する仕組み
2026年05月28日 12時00分更新
生態系の中で、多種多様な生物は単独で生きているのではなく、しばしば共生関係を構築して生息環境に適応しています。例えば、カメムシ類の多くは消化管に共生器官が発達しており、生存や成長に重要な役割を果たす共生細菌を保有しています。
産業技術総合研究所モレキュラーバイオシステム研究部門の深津武馬首席研究員らの研究チームは、チャバネアオカメムシと大腸菌を使った実験で、単一の酵素遺伝子の機能を喪失させるだけで、大腸菌がカメムシの腸内に共生して成長および生存を支える共生細菌に変化することを見いだしました。研究チームは今回、共生するように独自に進化させた大腸菌に感染したカメムシでは、必須アミノ酸の1つであるトリプトファン(Trp)の体内濃度が著しく上昇する一方で、大腸菌におけるTrp分解酵素遺伝子の発現量が顕著に低下していることを発見。Trpを分解して作られる毒性の有機化合物であるインドールの体内濃度が有意に低下していることもわかりました。さらに、自然界においてカメムシ類の生存を支える多様な腸内共生細菌のゲノム配列を調べたところ、Trp分解酵素遺伝子をことごとく喪失していることが判明しました。
今回の成果は、これまで容易には起こり得ないと考えられていた共生細菌の進化が、Trp分解酵素というたった1つの酵素遺伝子の機能喪失により起こることと、その代謝的な基盤を実証的に示したものです。今後は、共生を創り出したり、デザインしたりする技術への展開も可能になると見込まれます。
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