【JSTnews5月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業CREST 研究領域「海洋とCO₂の関係性解明から拓く海のポテンシャル」/研究課題「気候変動に伴う低次栄養段階生物の応答と炭素吸収能の評価」
カムチャツカ半島沖での25年の観測で、北太平洋西部亜寒帯域の変化が明らかに
2026年05月27日 12時00分更新
近年、地球温暖化が進むにつれて、海洋環境にも深刻な影響が広がっています。海洋は人間活動によって排出された二酸化炭素(CO₂)の約4分の1を吸収しているため、CO₂排出量の増加に伴って「海洋酸性化」が進行しています。海水が酸性に傾くと、炭酸イオン濃度が減少して炭酸カルシウムの溶けやすさが低下し、炭酸カルシウムを骨格や殻に利用しているサンゴや貝類、プランクトンなどの海洋生態系に重要な生物に悪影響を及ぼす恐れがあります。
海洋研究開発機構地球環境研究部門の相田(野口)真希主任研究員らの研究チームは、北太平洋西部亜寒帯域のカムチャツカ半島沖に位置する定点K2(北緯47度、東経160度)において、海洋地球研究船「みらい」による現地調査や人工衛星観測データを用い、1999年から2023年までの25年間にわたる海水温などの変化を解析。その結果、同海域の海面水温は年率0.056度で上昇し、日本近海の1.87倍の速さで温暖化が進んでいることがわかりました。酸性化の指標となるpHが年0.0014ずつ減少しており、その変化は全季節を通じて世界平均とほぼ同程度でした。一方、ケイ酸塩、リン酸塩、硝酸塩といった植物プランクトンの生産に必要な栄養塩の年平均濃度には長期的な変化は見られませんでしたが、5月に増加し、7月に減少するという10年規模の変化が確認されました。
この研究により、北太平洋亜寒帯域の海洋酸性化と生物生産の長期変動に関する理解が大きく前進しました。研究チームは今後も、定点K2での継続観測を通じて海洋環境変化の予測精度向上を目指していく考えです。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第106回
TECH
ファンタジーの魔法使いのような人工知能に夢を見た。日本語のニュアンスを捉える自然言語処理を研究 -
第105回
TECH
次世代エレクトロニクスデバイスの性能向上のために重要な、有機薄膜の自己組織化メカニズムを解明 -
第104回
TECH
子宮内での胚の着床の分子機構を解明、不妊治療の発展に期待 -
第103回
TECH
異なる材料同士をつなぐ接着剤の高性能化を見据え、界面分子鎖の運動の観察に成功 -
第102回
TECH
生きた哺乳類の生体組織を透明化する試薬を開発 -
第101回
TECH
セラミックス膜を使った世界唯一の独自技術で超高純度リチウム回収、資源循環を目指す -
第100回
TECH
必要な支援決定がすぐ行え、子ども支援につながるスクリーニングシステム -
第99回
TECH
無数の微細な孔を持ち電気を流す! 「導電性ナノ多孔体」の合成法を確立 -
第98回
TECH
集団内の多様性と同調が、危機の回避に役立つ――ハエの行動から探る「集団の力」 -
第97回
TECH
酵素遺伝子の喪失がカギとなる、大腸菌がカメムシ共生細菌へ変化する仕組み - この連載の一覧へ








