メルマガはこちらから

声が大きい人が勝ちでいいの?政府系アクセラが抱えるジレンマ

特集
世界に挑むICTスタートアップリーグ 成功への道

 世界のスタートアップ・エコシステムは、2013年にフランスで始まったLa French Tech以降、政府や大手企業を巻き込んだ包括的な支援へと進化している。政府が介入することで、より早くエコシステムを拡張できるのが特徴で、既存企業の力が強いフランスやドイツはオープンイノベーションを推進し、ジョージアやスロバキアなど既存産業の規模が小さい国々では、海外からスタートアップの誘致を積極的に進めている。日本政府のスタートアップ5カ年計画もこれに倣うもので、ICTスタートアップリーグもその取り組みのひとつだ。政府系の支援プログラムは、規制改革に向けた特例制度や実証のためのインフラ提供といった民間にはできない支援がカギであり、これらを活用することで経済・社会の構造を変えることに大きな意義がある。この点で日本のエコシステムは、海外に比べて遅れをとっているようだ。

 ICTスタートアップリーグの運営委員会委員を務める藤本あゆみ氏は、「国の支援プログラムに採択されることは、民間のアクセラに採択されるのとはまったく意味合いが違う。もっとスタートアップ側から政府に要望を伝えてほしい」と話す。海外などのプログラムや特例制度と比較すると、日本での施策ではまだスタートアップ側からの声が少なく、真の活用というレベルにまでは至っていないようだ。

 採択企業から要望が出ないのは、政府系支援は公平性を重視しなければならない制約もあり、民間の支援に比べて担当者との距離が遠く、関係性を築きづらいのも理由のひとつだろう。規制改革に対する世間からの風当たりの強さもあるが、政府側も声だけが大きいスタートアップをただ優遇するだけでなく、国力につながるような規制改革へと発展させることが必要だ。そのときには、スタートアップも批判を恐れずに挑戦する気概を持ち、そして社会全体でも、変化に対して少し寛容になることが大切なのかもしれない。

文:スタートアップ研究部

ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。

※ICTスタートアップリーグとは?

ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
https://ict.startupleague.go.jp/

バックナンバー