オープンイノベーションを成功に導く特許を活用したパートナーの探し方と連携提案書の作り方とは
「特許情報を駆使して未来のニーズを先取りする連携提案術」レポート
提供: IP BASE/特許庁
オープンイノベーションにおける課題
パネルディスカッションでは、「オープンイノベーションにおける課題は?」、「出会いの質を高める:特許情報を駆使した“偶然”ではないオープンイノベーション」、「特許情報を事業提案にどう活かすか? 刺さる連携パートナーシップの築き方」の3つのトピックについて話し合った(以下、敬称略)。
高田:オープンイノベーションを進めていく中で、難しいと感じたことはありますか?
辻:大企業とのオープンイノベーションで、我々が最初に課題として感じるのは、「一緒に向かっていく先を定めること」です。連携を実現するまでに乗り越えなければいけない壁がたくさんある中で、最初に話をするのは新規事業部門の方々であることが多いのですが、なかなか相手の腹の内が見えず、スタートアップとしてはもどかしく感じてしまうことがあります。
鈴木:お互いに、最初は相手の力量を見定めようと、構えて話をしてしまうからかもしれません。その結果、「連携した先にどんなメリットや価値があるのか」という話をする前に、技術的なシーズの話に時間を費やしてしまい、消化不良のままになってしまうのでしょう。
片山:私はPoC(概念実証)や共同開発にあたって契約書を作成するタイミングで関わることが多いのですが、その時点で双方のスタンスが合っておらず、結局、お互い妥協できずに交渉が決裂してしまうことがあります。例えば、大企業側は「自社の新規事業のための研究開発をアウトソースしたい」、スタートアップの我々は「自分たちの独自技術を多方面で展開するためのパートナーを見つけたい」という行き違いがあることに、契約の段階になって初めて気づくと、それまでの時間が無駄になってしまい、どちらにとっても不幸です。契約の前にお互いのスタンスをしっかり認識しておくことが大事だと学びました。
高田:まさに最初にすり合わせておきたい部分ですね。大企業側の体制に課題がある場合もあって、新規事業開発担当者とスタートアップは意気投合したのに、契約書の作成段階で法務部などに担当が代わると話がまとまらず、なかなか進まなくなるケースがあります。大企業側も、事業部と法務部が一緒に同じ気持ちでやっていけるような仕組みづくりが必要でしょう。
鈴木:スタートアップ側から連携を提案するタイミングも大事になります。提案する前に、大企業のIR情報や統合報告書などを時系列で追って見てみると、「いまは研究開発に積極的な時期かどうか」や「どの分野に注力しようとしているのか」を読み取ることができます。
高田:そうですね。同じ大企業内でも部門によって話の進み方が違うので、もし一度だめでもタイミングを見計らって、別の部門に提案すると通ることもあります。
辻:我々も似た経験があります。先ほどの「スタートアップのための事業会社との連携マニュアル」のひな型を活用して、自分たちのサービスイメージを3つのビジュアルにして提案したところ、相手の新規事業部門の方がそれぞれに合った別々の部門の担当者を紹介してくれ、話がスムーズに進んだことがありました。
鈴木:ビジネスモデルを構想したときにゴールのイメージが複数ある場合には、無理に1つに絞らず、3つくらいの選択肢を提示するというのはいい方法です。相手がどこに興味を持ってくれるのかもわかりますから。