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実証実験から売上につなげるには 時間が課題のスタートアップの悩みを解決

CEATEC 2023「アビームコンサルティング×ASCII STARTUP スタートアップピッチ&オープンメンタリング」セッションレポート

連載
IoT H/W BIZ DAY 2023

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溶着不要・リユースできる超高真空技術でCO2削減やフードロス問題を解決/株式会社インターホールディングス

株式会社インターホールディングス 代表取締役社長CEO 成井 五久実氏

 株式会社インターホールディングスは、独自の真空特許技術を活用した事業を展開している。同社のミッションは、ペットボトルなどのワンウェイ容器や食品ロスをなくし、世界中の”捨てる”行為を減らすこと。特許をもつ真空特許技術を用いた真空パックのリユースによりCO2削減、賞味期限の延長によるフードロス課題の解決に貢献できる。

 同社の真空特許技術は、ハジー技術研究株式会社の萩原 忠氏が開発。萩原氏は、NASAのアポロ計画でロケットの油圧機器のバルブの開発者であり、このバルブ技術を応用して作られたのが同社の逆止弁付き真空パックだ。専用の装置を使わずに簡単に脱気でき、かつ繰り返し使えるのが特徴。逆止弁は4つのパーツで構成されたシンプルな構造で量産もしやすい。真空率は99.5%と高く、一般的な熱圧着による真空パック(真空率80%程度)に比べて食品の長期保存が可能だ。

 この真空パックに米を入れると約6カ月間は水分量に変化がなく、新米のまま保存が可能。オリーブオイルは10カ月酸化せず新鮮な味が保てる。また、ワインの抜栓後に同社の真空容器で保存したところ、1カ月間味の変化がなかったという。実験では冷蔵保存をすれば牛乳の賞味期限の30日間延長も可能だという。

 同社はこの真空特許について、2022年11月に特許の権利譲渡を受けており、ライセンスおよび製品ビジネスがマネタイズのポイントだ。この真空容器をサプライチェーン全体に組み込み、フードロスとCO2削減を同時解決することを目指している。例えば、生産者の収穫物を大容量の真空パックに入れると、鮮度を保ったまま世界中に運べる。小売飲食店向けには個包装をなくすための真空量り売り機を開発。消費者向けには、真空マイボトルのプロジェクトを開始している。

 スーパーマーケット・トレードショー2023では、ポスレジと連動した量り売り機を大手量り売りメーカーの株式会社イシダと共同発表。野菜量り売り専門店「HACARI中目黒店」など採用が始まっている。また、精密機器などを輸送する際の発砲スチロールの代わりとなる、捨てない真空緩衝材も開発しており、PoCを経て大手物流メーカーに採用される見込みだ。

 ライセンスビジネスでは、大手食品メーカーが販売する調味料や飲料の容器などにも広げていくため、真空技術の紙パックを開発。製造パートナーとして大手印刷メーカーと提携し、売上に応じたライセンスフィーを得ることを想定している。

 悩みとして、これまでに大手企業と多くのPoCを行なっているが、売上に結びつくまでに半年~1年かかっているという。シリーズA以降の調達に向けて、売上営業利益以外にどのようなKPIを設けるべきかについて相談した。

 吉田氏は、「食品の場合、安全確認のため実証実験が多くなるのは仕方がないと考える。シンプルでわかりやすいサービスなので多くの企業が興味を持つと思う。イベントを活用してネットワークを広げ、多くの企業に気づいてもらえると考える。KPIとしては、特定領域のメーカーの攻略目標を立てて、PoC達成率や研究進度をエビデンスとして出すのもひとつの方法。投資家は将来性や社会変革を見て判断する場合もある。目先の売上に捉われず、シンプルにサービスの未来の可能性を訴えて、相手を巻き込んでいくことが大切」と回答。また、PoCから実装へ進めるためのポイントやPoCの費用についてアドバイスした。

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