「Maginific AI」は丸投げできてラクだが高すぎた……
そんな中、2023年12月に登場して注目されたのが「Magnific AI」。スペインのベンチャーが開発した画像生成AIのクラウドサービスです。アップスケールのみに特化するサービスという点が面白い点でした。
UIは非常にシンプルでわかりやすく、アップスケールをしたい画像をアップロードして、Upscaleのボタンを押すだけ。1分ほどで、デフォルトでは2倍に高解像度化して、様々な描き込みを入れてくれます。最大16倍まで大きくできます。変化の度合いは「Creativity」などのパラメータで制御できます。大きな数値を設定すると画像はかなり変わってしまいますが、独自のディテールが追加されて出力されます。
最大のメリットは何よりも、「適当にアップすればなんとなくいい感じに、アップスケール画像を出力してくれる」ということ。思い通りにならないこともありますが、試行錯誤をしたり、元の画像と合成したり、部分的に使うというやりかたもあるので、便利です。
仕組みについては情報がまったく公開されていませんが、プロンプトを一切指定しなくても画像にそれなりに合わせて生成されるので、画像解析をして、画像からプロンプトを生成した後、Tiled Diffusionに似たような処理をしているのではないかと推測されています。
Maginific AIはディティールの付け方が独特で、美しい結果を生み出すこともあるため、変わった使われ方も探られています。
Magnific AIを他のサービスと組み合わせるプロのアーティストも出てきています。たとえばMartin Nebelongさんがやっているのはリアルタイム生成との組み合わせ。3Dツールを使った画面をリアルタイム生成で撮影し、Magnific AIを使って高解像度版にするというワークフローを提案されています。
Took my one hour Dreams sculpt through photoshop, Magnific ai and Krea ai.. A pretty poweful workflow I'd say! And best of all, that feeling of creative control over the generative process starts to feel real. Still just a glimpse, but there's something there 😊#MadeInDreams… pic.twitter.com/82z0xY8f3N
— Martin Nebelong (@MartinNebelong) February 2, 2024
こうした便利なサービスではあるのですが、問題は値段が高いことです。無料のお試しはなく、月39ドルで、2倍のアップスケール処理が200回できるという内容。さらにプレミアムだと月99ドル、月299ドルという高さ。アップスケールしかできないのに、Midjourneyのスタンダードプランの月間30ドルよりも高いんですよ。そのことから、なんとかMaginific AIをもっと安価に使える方法はないかと、ディテールを増させるように学習させたLoRAなど様々なアプローチを通じて開発が進められてきました。
こうしたもののひとつとして登場したのが、「カクダイV1」です。
この連載の記事
-
第87回
AI
画像生成AIの進化が早すぎる 2024年に起きたことまとめ -
第86回
AI
イラストに強すぎる画像生成AIモデル SDXL系「NoobAI-XL」の衝撃 -
第85回
AI
3DモデリングにAI革命の兆し 1枚のイラストから3Dデータが完成 -
第85回
AI
誰でもVTuber時代へ フェイシャルAI技術、続々登場 -
第84回
AI
画像生成AI「Stable Diffusion 3.5」性能はものたりないが、自由度が高いのは魅力 -
第83回
AI
リアルすぎてキモい 動画AIの進化が止まらない -
第82回
AI
もはや実写と間違えるレベル 動画生成AI「Runway」の進化がすごい -
第81回
AI
AIイラスト、こうしてゲームに使っています -
第80回
AI
ゲーム開発はAI活用が当たり前になりつつあるが、面白さを作り出すのは人間の仕事 -
第79回
AI
AIが考える“アイドル”がリアルすぎた グーグル「Imagen 3」なぜ高品質? -
第78回
AI
話題の画像生成AI「FLUX.1」 人気サービス「Midjourney」との違いは - この連載の一覧へ