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福島震災復興に新たな産業創出を目指す 20のスタートアップビジネスアイデア

「Fukushima Tech Create 2024成果発表会」2日目

提供: 福島イノベーション・コースト構想推進機構

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福島県産マッシュルームの復活と持続可能な農業設備の技術開発/安田 悟氏

 キノコ専門農家を営む安田氏は、震災後の風評被害で消滅した福島県産マッシュルームを復活させるため、持続可能な農業設備の技術開発に取り組んでいる。マッシュルーム栽培には、栽培施設の導入費用が高額、キノコ大量発生時の作業負担が大きい、という2つの課題がある。

 これを解決するため、既存の農業用パイプハウスと既製品の棚を組み合わせることで設備費用を10分の1に削減。また、大量発生を抑えるヒートポンプによる温水培地加温、腰を曲げずに収穫できるフォークリフト培地容器の昇降機能を開発した。加温により、収穫までの期間が約20%短縮。発生タイミングのコントロールも可能で栽培管理がしやすいそうだ。栽培施設一式とヒートポンプシステム、栽培ノウハウをパッケージ化し、想定価格2000万円にて2027年の販売を目指す。

安田悟氏

福島県の民間伝承生薬である「ウマブドウ」を用いた食品開発/谷井 唯人氏

 福島県では古くからウマブドウが肝臓に対して効果があると伝えられ、薬用酒や漢方に利用されてきた。東京理科大学の谷井唯人氏は、この伝統を他地域や若い世代に広めるため、若者の健康につながるウマブドウを用いた食品開発に取り組んでいる。

 若者が抱える肝臓疲労や栄養不足、睡眠不足の解決策となるような美味しいドリンクを目指し、ウマブドウの焼酎漬けに、GABA・テアニン、ビタミンと食物繊維を多く含む福島産フルーツを加えた商品を開発中。しかし、ウマブドウはクセが強いため、焼酎漬けから酢漬けに変更し、人工甘味料やフルーツジュースを混ぜるなど改良中だそう。

 ウマブドウは自社農場で生産。その他のフルーツは、提携する浜通りの農家から仕入れ、福島県内の加工工場で委託生産する。自社農場での生産に向けて、谷井氏を含む学生が福島に移住予定。2025年に東京理科大学近辺や福島の10店舗以上での販売を予定し、2026年以降、福島や関東圏での販路を拡大していく予定だ。

東京理科大学 谷井唯人氏

エンドファイト技術による荒廃農地での高付加価値な農業生産の実現/株式会社エンドファイト

 株式会社エンドファイトは、微生物技術をコアに、食糧問題や土壌森林再生等の環境課題に取り組む茨城大学発のインパクトスタートアップ。プラットフォームの役割を担う微生物「Dark-septate endophyte(DSE)」を用いた培養土で育苗することで、通常は生育困難な条件下でも良好な生育が可能になる。イチゴ栽培の事例では、季節や気候条件を無視した花芽、果実形成の誘導、育苗期間の短縮、果実形成数の増加、糖度上昇などの効果が得られたとのこと。ほぼすべての植物に利用可能で、量産コストにも優位性がある。

 自社で培養土や苗の販売、コンサルティングサービスを提供するほか、企業や自治体と協業し、技術提供とライセンス事業を展開する計画で、すでに複数の大手企業との実証実験を行なっている。2024年度から米国など海外にも展開していく計画だ。

株式会社エンドファイト 代表取締役兼CEO 風岡俊希氏

「伝統×先端」でふるさと特産品「キウイ」を復活/原口 拓也氏

 原口 拓也氏は、大熊町特産のキウイの復活に取り組んでいる。大熊町はキウイと梨の生産が盛んだったが、震災後の除染によりすべて伐採され、現在は県内での果樹生産はほとんど行なわれていない。

 原口氏は、大熊町における梨キウイ栽培の第一人者であり、現在は千葉県でキウイ栽培をしている関本 好一氏に出会い、関本氏の開発した多収穫、追熟技術を継承し、大熊町のキウイ栽培を復活するため起業を決意。関本氏を社内顧問とし、大熊市内の実験圃場でキウイ栽培を行っている。また、事業を次世代に継承できるように、管理記録をオンラインで管理し、栽培方法を可視化するデータベースを構築。さらに、風評被害対策として、ブロックチェーンを用いた放射線の情報や販売までのトレーサビリティ管理システムの開発、NFTを用いたキウイのオーナー制度を計画しているそうだ。

株式会社ReFruits 代表取締役 原口拓也氏

スマートデバイスで異音をAI検知する高齢者向け食事観察システム【 KIRAKU - 喫楽 - 】/バイオソノ株式会社

 介護事故における死因の第1位は誤嚥で全体の約6割を占める。誤嚥の早期発見には呼吸音などから判断する方法があるが、非医療従事者の介護者が頸部聴診するのは難しい。バイオソノ株式会社は、誰でも手軽にのどの音で安全確認できるように、異音検知AIを用いた食事観察システムを開発。のどに装着する集音デバイスとAI搭載アプリで構成し、異音を検知するとスマホに通知する仕組みだ。

 まずは非医療機器の食事観察システム「KIRAKU」としてスタートし、蓄積したデータを元に 呼吸器系疾患など医療領域に参入、将来はライセンス供給によるグローバル展開を目指して いる。今年、2024年7月にβ版をローンチ、2028年にプログラム医療機器ライセンス供給を開始する計画だ。

バイオソノ株式会社 代表取締役 遠山賢氏

リハビリロボットで働きたい人のリハビリ不足を助けたい/大友 高行氏

 40代~64歳の脳卒中患者28.1万人のうち、6.8万人はリハビリ不足で復職できない。入院中のリハビリは一般的に足の運動がほとんどで、手の運動が不足していることから、大友 高行氏のチームは、手の訓練時間を増やすために、反復運動用の小型リハビリロボット「RAKKUN」を開発。指の曲げ伸ばしロボットと手首と腕の運動ロボットがあり、利用者の関節の状況に応じて運動内容を変える機能を搭載する。

 ビジネスモデルは就労支援事業所と連携して、リハビリロボットのレンタルによる収益化を想定。FTC事業では、障碍者雇用支援サービス企業や就労継続支援事業所へのヒアリング、福島県内の病院やリハビリ施設でロボットの機器評価などを実施した。今後は、医療機関と連携して臨床試験を行い、2027年に医療機器認定取得、2028年の医療機器としての上市を目指している。実用化に向けて、事業パートナーを募集中だ。

Project RAKKUN 代表 大友高行氏

AIを活用したバイオデータ可視化サービス/川端 瞭英氏

 遺伝子検査等で得られるバイオデータは、さまざまなサービスのパーソナライズなどに活用できる。川端瞭英氏のチームは、遺伝子情報をスマートに活用できるAIシステムとサービス開発のハンズオン支援で提供する事業を展開している。

 パーソナルジム事業者での事例では、利用者の食事メニューを提案する食トレAIサービスを開発。バイオデータに基づいたパーソナルメニューを生成することで利用者の満足度が向上し、トレーナーもメニュー考案の業務時間を大幅に削減できたとのこと。将来は、腸活プログラムや出張シェフとの提供も検討しているそうだ。2024年に福島に移住、起業し、2025年にはSaaSとしてパッケージ展開する予定だ。

川端瞭英氏

“ロボット触診”によるトップアスリートの筋肉疲労の数値化/タグル株式会社

 プロスポーツ選手がパフォーマンスを発揮するには、ケガの予防とコンディション管理が重要だ。従来のコンディション管理には、採血や体組成計、筋電計などが用いられてきたが、特定の筋肉の疲労度が測定されず、ケガのしやすい場所の状態がわからなかった。

 タグル株式会社は、ロボット工学を応用し、手による触診と同じように特定の筋肉の疲労度を可視化するデバイスを開発。FTC事業では、いわきFCと協業し、選手の筋肉の疲労度を可視化する実証実験を行っている。ビジネスモデルは、ハードウェアを販売またはリース、ソフトウェアをサブスクでの提供を想定。2025年以降から国内外のプロスポーツチームへ本格導入し、2030年以降はスポーツジムや高齢者のリハビリ施設への活用を目指している。

タグル株式会社 代表取締役 遠藤洋道氏

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