ロボット、AI、EV、量子コンピュータなど、グローバルブレインが直近1年間に投資した注目スタートアップ7社が登壇
「Global Brain Alliance Forum 2023:Startup Pitch Battle 2023」レポート
数理最適化の社会実装を支援し促進する/株式会社Jij
株式会社Jijは、東京工業大学発の数理最適化・量子技術スタートアップ。数理最適化プラットフォームと共同研究開発コンサルティングの2つの事業を展開している。
数理最適化は、配送計画やさまざまな制御の自動化への活用が期待されているが、数理最適化のプロセスの中で難しいとされるのが問題の数式化だという。同社は、数理最適化の実践を支援するミドルウェアクラウドサービス「JijZept」を開発。「JijZept」はモデルの定式化を支援する機能を提供し、非専門家でも簡単に最適化計算のプログラムを開発できる。実際に大手Sireが「JijZept」を導入したところ、開発工数が最大70パーセント削減できたという評価を得ているそうだ。
そのほか、東邦ガスのコージェネレーションシステム、またトヨタ通商とマイクロソフトの信号制御の最適化、KDDIの通信最適化、そのほか材料開発などのさまざまな領域でユースケースが広がっている。さらに、富士通やNEC、東芝、D-Wave Quantum Inc.など国内外のパートナー企業と連携して扱える問題の幅を拡大しており、今後ビジネスへの応用や社会問題解決への活用が進みそうだ。
企業のサステナビリティ情報の開示を支援する/シェルパ・アンド・カンパニー株式会社
2023年から有価証券報告書などでサステナビリティ情報の開示が義務化され、上場企業では情報開示への対応が大きな課題と業務負荷になっているという。シェルパ・アンド・カンパニー株式会社は、ESG情報開示に取り組む企業向けに、情報収集・開示プロセスを効率化・可視化するクラウドサービス「SmartESG」を開発・運営している。
「SmartESG」はワークフロー、データベース、マトリクス、ベンチマークの4つの機能を搭載する。ワークフロー機能では、各部署に散在するアンケートや調査票を収集・集計。収集したESGデータをデータベースに蓄積し、全社で一元化された情報を見ることができる。マトリックス機能ではAIを用いてESGの評価項目を分析し、各評価機関や開示基準から評価ポイントを特定する。またベンチマーク機能では、ESGスコアが高い企業はどのような開示をしているのかを分析する。これらの機能により、サステナビリティ部門の情報開示プロセスを60~70%効率化できるとしている。
「SmartESG」を導入した大日本印刷は、運用開始から2カ月で業務負担が8割削減し、スコアの向上にも貢献しているそうだ。リリースから1年足らずで、トヨタ自動車、三菱UFJグループ、KDDIなど超大手企業を始め、サントリーホールディングスのような非上場の企業にも導入が進んでいる。今後は、評価機関や取引先がSmartESGを使って情報を収集可能なプラットフォームを構築していく予定だ。
審査員賞はEV充電の課題を解決する株式会社Yanekaraが受賞
審査の結果、審査員賞は株式会社Yanekaraが受賞。審査員のNoxx Co-founder and CEOの小林清剛氏からトロフィーが贈呈された。GBAF賞にはブルーモ証券株式会社、オーディエンス賞にはSpiral.AI株式会社が選ばれた。
最後に、審査員の杉山氏は総評として、「例年にも増してレベルの高いピッチで感心しました。今年は特にAI、EV、量子コンピュータといった技術に特化した会社が多かった。それも、技術的に優れている、速い、安いというだけではなく、それらの技術が実際に生活に立脚し、課題を解決するためにつくられたサービスやプロダクトだった。さらに出資を得て、いい人材を獲得し、プロダクトやサービスをより一層ブラッシュアップしていただきたいと思います」とコメントした。