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ロボット、AI、EV、量子コンピュータなど、グローバルブレインが直近1年間に投資した注目スタートアップ7社が登壇

「Global Brain Alliance Forum 2023:Startup Pitch Battle 2023」レポート

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人間の人格や声をコピーした生成AIを開発/Spiral.AI株式会社

Spiral.AI株式会社 代表取締役 佐々木 雄一氏

 Spiral.AI株式会社は2023年3月設立の生成AI専門スタートアップ。LLM(大規模言語モデル)は対話の正確性(IQ)が注目される領域だが、同社は対話の楽しさや効果といったEQにフォーカスし、音声を用いたコミュニケーションや利用者に合わせたパーソナライズの技術を研究開発している。

 現在普及しているChat GPTをベースにしたチャットボットは正確さを優先するため、自然な会話は難しい。そこで、同社はタレントの真島なおみさんの人格をコピーした「Naomi.AI」を開発。「Naomi.AI」に話しかけると、真島さんの言葉づかいや考え方に即した答えが返ってくるという。テキストだけでなく、音声によるやりとりも可能だ。会場では、瀬戸内寂聴さんの音声言語モデルによる人生相談のデモを紹介した。

 今後は、個性を再現したAIキャラクター作成・運用するプラットフォームを構築し、あらゆる産業へと拡大していく計画だ。例えば、有名な塾講師の話し方や教え方を再現した教育AI、優秀な保険外交員の会話術を模倣した金融商品販売AIなどへと展開していくという。

 また究極的には、一人ひとりが自分自身の言語モデル(ツインモデル)をつくり、自分の代わりに働いてくれる世界を目指していくとのこと。

生成AIを用いたカスタマーサポートで顧客満足度を向上させる/カサナレ株式会社

カサナレ株式会社 代表取締役CEO 安田 喬一氏

 カサナレ株式会社は、顧客体験を最適化するためのLLMを用いたAIコミュニケーション・プラットフォーム「Kasanare」を開発している。既存顧客への満足度の向上は、継続的なサービスの利用や契約後の対応コストの削減など、売上の最大化に貢献する。ただし、顧客はそれぞれ好みやITリテラシー、購入履歴などの前提条件が異なり、一人ひとりに合った対応が求められる。

 オフィスや商業施設、講演会、スクールを対象にチャットやアバターモード、音声認識でのユーザー検証を行ったところ、顧客が求めているのはチャットボットではない、ということがわかったという。

 「Kasanare」は、LLMを活用し、すべての顧客に寄り添った理想的なユーザー体験の実現を目指す。「Kasanare」のco-Pilot機能では、ユーザーが何も言わなくても、隣にいる先輩が教えてくれるようにそのときどきに応じて答えを返す。

 デモとして、PCパーツのECサイトの例を紹介。気になるパーツをドラッグ&ドロップすると、AIが自分のPC情報と照らし合わせて、適合するかどうかを教えてくれる。デモでは、電源ユニットの電力が不足していることがわかり、手持ちのPCで動作するパーツをリストアップして提案してくれる。このように、ユーザーが質問しなくてもAIが先回りして必要な情報を答えてくれるのがco-Pilot機能だ。

 単純にLLMにデータを読み込ませると間違った答えを返す場合がある。これを防ぐため、Kasanareでは、導入先に合わせた回答内容を検索するエージェントを開発することで、回答品質の向上を図っている。現在、製造業や金融、小売サービス業など30社以上に導入されているそうだ。

EV充電タイミングを遠隔制御するコントローラーとEVの蓄電池活用を促進する次世代充放電器/株式会社Yanekara

株式会社Yanekara 代表取締役/CEO/CTO 松藤 圭亮氏

 株式会社Yanakaraは、日本のエネルギー問題に取り組む東京大学発のエネルギーテックスタートアップ。日本でも本格的にEVが普及しつつあるが、課題となるのが充電時にかかる電力網への負荷だ。EVの充電タイミングは帰社・帰宅時の夕方に集中することが予想される。同時に10万台のEVを充電するには火力発電1基分に相当する電力を必要とするというため、EVの充電タイミングの分散は必須だ。一方で、EVは蓄電池にもなり、太陽光発電の電力が余りがちな昼間にEVに充電して夜から朝にかけて家庭用電力として消費すれば、再生可能エネルギーの利用にも貢献できる。

 Yanekaraは、EV充電のタイミングを制御するEV充電コントローラー「YaneCube」と次世代型スマート充放電器「YaneBox」を開発している。「YaneCube」は、充電タイミングを遠隔制御できるEV用コンセント。日本郵便の銀座郵便局は2023年7月から「YaneCube」を導入し、93台の集配用EV車両の充電を遠隔でコントロールし、夕方の充電ピークの抑制に活用しているそうだ。

 導入先は物流施設や公的施設などを想定。EV100台の導入モデルケースでは、補助金を活用することで約30万円で「YaneCube」を導入可能だ。充電ピークのカットにより、年間100万円以上の電気代削減効果も得られる。なお、2024年には「YaneCube API」を開示する予定で、エネルギー会社のエネルギーマネジメントシステムにもAPI連携で簡単にEV充電制御サービスを組み込めるようになる。

「YaneBox」は、効率的にEVを蓄電池に変えられるアダプターだ。高額な据え置き型蓄電池の代わりにEVを蓄電池として使いたいというニーズは強いが、それには専用の充放電器が必要で、非効率なうえに高額だったという。「YaneBox」は、現行のトップシェアの充放電器に比べて高効率で、特に1000W以下の低出力では、ロスが7割低減されるとしている。また、購入価格は50万円~と既存製品の約半額になる見込みだ。

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