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新車を買った情報2023 第123回

SUVと和解せよ

2023年11月12日 07時00分更新

文● 四本淑三

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アンチSUV主義者の言い分

 アーイアムアンアンチSUV!
 アーイアムアンエンスージアスト!

 ぜひジョニー・ロットンの口調でお読みください。

 白状しましょう。普通運転免許を取得してから35年、私は一度だってクルマを便利なものと感じたことはございませんでした。あからさまに嘘と分かる白々しい名目で税金を取られようが、トリガー条項発動の条件が揃っているにも関わらず補助金を垂れ流す施策にクソと呪いつつも、私はいまだにクルマが好きであります。運転が楽しい、メカニズムが面白い、デザインが素晴らしい。そうしたことにクルマの存在意義があるのだと考えてまいりました。

 そこにやむを得ぬ事情からフォレスターがやってきた。大雪さえなければ「招かざるクルマ」であります。お前はね、雪道さえこなしてくれたらいいんだから。そんな気持ちで乗り始めたところ、自転車は縦に積める、車中泊はできる、リアハッチを跳ね上げラゲッジの開口部に座ればタープやテントを張らずともコーヒー休憩ができる。なるほどSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)とはこの事か。すげー便利やん。

 家族で乗るならセダンでいいではないか。荷物を積むならワゴンがあるだろう。なぜ最低地上高を上げて空力を悪化させ、大きなタイヤを履かせてパワーを無駄にし、わざわざ燃費を悪化させる必要があるのか。おまけに同乗する家族や友達の機嫌取りまでしなければならない。オレはそんなクルマの運転席になんか収まりたくねーぞ。

 そうした頑ななアンチSUV思想は、まずこの使い勝手の良さを知りトーンダウンせざるを得ません。クルマに乗る目的はクルマそのものを楽しむことだけじゃない。クルマを使って何かをしに行くこともまた楽しい。リア充の皆さんにはごく当たり前のそうした認識が私には欠如していたのであります。

 またSUVは目線が高いから視界がいいと言いますが、私に見えたのは高次のレイヤーに存在する「世間」の様相でありました。信号待ちでふと顔を横に向けると隣のドライバーと目が合ってしまう。窓を開けていれば会話も筒抜け。ロードスターからフォレスターに乗り換えるたび、いまだに気まずい思いがいたします。

 というのも普段ロードスターから見えるのは、隣のクルマのタイヤ、聞こえてくるのは排気音ばかり。人と目が合うのは保育士さんに押されて横断歩道を渡るお散歩カートの園児くらいであります。気がつけば前はRAV4、後ろはエクストレイル、左は同じ色のフォレスター。なんだ世の中SUVばかりではないか。ロードスター目線のオレ、大海を知らず。

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