「失敗を恐れず」宇宙へ挑む。技術を持った企業が日本の宇宙事業に関わる可能性
「SPACETIDE 2023」パネルディスカッション 今後10年間の日本の国家宇宙戦略レポート
日本として国際競争力を持つ企業を育成していくには
石田氏:最後に山川さんにうかがえればと思いますが、日本として国際競争力を持つ企業を育成していくという話がありました。また、JAXAの機能強化という話が冒頭にありました。この二つはどうつながっていくのでしょうか? それぞれと合わせ、どういう風に民間の産業強化とつながっていくようになるのでしょうか?
山川氏:ちょっとストレートに答えられないかもしれませんが、宇宙の民生分野、それから安全保障分野、双方の観点からの技術開発が重要だと思っています。民生分野はさておき、安全保障分野に関しては民間企業や大学の貢献がもっと期待できるんじゃないかと私個人は思っているというのがまず1点目です。
それから最先端分野だけでなく、持続的に事業を展開するためには、最先端ではなくても必要な部品や技術があります。そういった産業が我が国にあるのかということも非常に重要です。たとえば半導体などいろいろな分野がありますので、JAXAとしてはそういったところにも着目し、力を入れて取り組んでいきたいと思います。
また、JAXAの機能強化の目玉のひとつが、出資機能と資金供給機能です。出資機能は科学技術イノベーション活性化法案に基づいたもので、JAXAの自己資金を用いて直接あるいは間接に出資するということを始めています。民間企業の振興に貢献させて頂きたいというものです、
もうひとつは新しい取り組みで、これからの法律整備、あるいはJAXA側の体制整備が必要になってくるのですが、平たく言うと科学技術振興機構(JST)やNEDOのように資金を大学や産業界に供給する機能をもつ制度です。今後、政府と一緒に作り上げていく仕組みとなります。
出資や資金供給を進めるために、JAXAには目利き機能を果たす必要が出てきます。そのうえで産業界全体を活性化していくことが極めて重要だと思います。
もうひとつJAXAの機能として、我々自身が宇宙にアクセスする能力を持っていますので、宇宙特有の要求としてスペースプルーブン、つまり宇宙でいろいろ実証されているということが事業展開において極めて重要になっていきます。宇宙で実証されたものだということを示す機会を、透明性を持って提供していくということが重要になります、さらにいうと、政府が産業界のためにさまざまな法律を現在も運用していますし、おそらくこれからもいろいろ出てくると思いますが、それをJAXAとして支援していくことがもうひとつの重要な点です。
最後に国際競争力という観点でいうと、海外で我が国の産業が十分に認識されないと話になりません。私は毎週のように多くのミーティングに出席し、さまざまな国の政府や機関、産業界と話しています。その際に必ずB to Bの話になってきます。その中で我々としてできる範囲で、「日本の産業界にはこういう企業があります」、「こんな取り組みがあります」といった話をできる範囲でさせていただいています。そういった地道なこともJAXAはやっているんだということを最後にご報告させていただいています。